アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
緊急事態2
-
二人の会話を理解した瞬間、音葉が危ないと直感的に思った。
雨音の腕を振りほどいて音葉の楽屋へと走った。
「音葉?!」
音葉は口の端を丸めたティッシュで押さえている。
俺のあまりの慌てように、目を見開いてこちらを向く。
「連…」
「それ、どうしたんだ!」
「ちょっと切っただけ、大丈夫」
音葉は心配させまいと、ティッシュを口から離し、ニッコリと笑った。
「紫音がっ!」
言葉の続きは音葉の手によって遮られた。
「千秋楽まで耐えて。…お願い。紅も頑張ってるから」
音葉は今にも泣き出してしまいそうだが、必死にこらえている。
何が起こっているのか問い詰めたかったが、もう20分後には開演が迫っている。
「……わかった……傷、血止まらないならワセリン塗ろう。発声は?ちゃんとできる?」
「ありがとう。大丈夫、やれる。やるから」
「連さん!!」
音葉の傷を見ていると、衣装部アルバイト君が慌てて楽屋に入ってきた。
「どうした?」
「紫音さんの衣装ほつれが…」
「ほつれ?」
朝の最終チェック時には無かったはず。
きっと紫音が自分でやったのだろう。
本当にどこまで引っ掻き回すつもりだ。
「ジャケットの背中、30センチ位です」
「それもうほつれじゃねぇな!楽屋?」
「はい!」
「直ぐ行く。ほつれた糸外しとけ」
「わかりました!」
音葉の方を向くと、音葉は何かを必死に耐えるようにうつ向いていた。
「音葉…」
「大丈夫、大丈夫。早く行って」
「あぁ、」
心配だがもう行くしかない。
音葉の背中を軽く2回叩いて、楽屋を走って出だ。
このとき、音葉の「ごめん」という声が聞こえた気がした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
17 / 24