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「連さん!」
「はっ!?」
アイロンをかける手が止まっていた。
アルバイト君が心配そうにこちらを覗き込んでいる。
「チェック終わりました」
「あぁ、ありがとう」
「いつも以上に疲れてますね」
「そうか?」
「はい……連さんだけじゃなくて、全員」
「全員?」
「……おかしいです。…紫音さんがやってきてから」
アルバイト君からこんな言葉が出るとは思ってもいなかった。
「大丈夫、大丈夫。直ぐに普段通りに戻る」
この子をこの劇団に置いておく事は危険かもしれない。
優秀な子だ。ここで燻るより、他に行った方がいい。
「ありがとう、今日はもう終わり!気をつけて帰れよ!」
「……はい」
不服そうな彼の肩を叩いて、その場から離れた。
俺ももう帰ろう。
「音葉~帰ろう」
「うん」
体調は落ち着いているようだ。
化粧もおとしているし、既に荷物はまとめ終わっている。
「タクシー呼んどいた」
「ありがとう」
音葉の荷物を持ち、タクシーに乗り込む。
行き先を伝えた時、タクシーの窓が叩かれた。
叩いたのは、雨音。
ドアを開いて、無理やり乗り込んだ。
揺られること5分。
直ぐに音葉は眠った。
「満身創痍ですね」
「雨音こそ。終演後怒号が飛んでたな」
「人手不足です。怒号飛ばさないとやってられません。……俺が動けるならまだしも、こんな手ですし」
「早く治るといいな」
「まぁ、はい………それより、音葉さん限界なんじゃ…」
「わかってる」
「音葉さん無しじゃ、この劇団終わりますよ。」
雨音の言うことは正しい。
脚本や演技指導、歌唱指導、運営や広報、全て音葉がやってきた。
正直、紅のファンより、音葉のファンの方が多いし、ガチ度も高い。
「何が正解なのか、俺にはもうわかんねぇよ」
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