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テスト結果
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これは夢か。
ほっぺをつねってみる。痛い。現実だ。いやもしかすると、あまりに現実味を帯びているだけでやはり夢なのではないか。もう一度ほっぺをつねってみる。痛い。やっぱり現実だ。
『黒子テツヤ 321人中4位』
先生にはよくやったと褒められ、火神君は口を開けたまま固まってしまっていた。ちらっとその手の中にある成績表を覗いてみると、……いやまぁ、あれだ。全くの期待通り。正に安定の火神君。赤点はなんとか回避してくれているようなのでいいとしよう。
「黒子君、今回凄く頑張ったのね…」
「花宮さんに見てもらったんです。流石進学校のトップはわかりやすかったです」
「あーそっか、そうだよなー。いやでもこれは凄いぞ。おめでとう、頑張ったな」
「ありがとうございます」
先輩方からもお褒めの言葉を賜り、ほくほく気分で帰路につく。早く花宮さんに報告したい。そう思うと自然歩調が速くなり、気付けばもう家は目の前だった。
「ただいま」
家に入ると、靴が一足綺麗に揃えられていた。これは花宮さんのものだ。急ぎ靴を脱ぎ、リビングの扉を開けると、ソファに腰掛け本を読んでいる花宮さんがいた。
「おかえり」
僕に気付いたようで、目は本に向けたまま声掛けられる。
「ただいまです。兄さん、今日テストの結果が返ってきたんですよ」
「おう、どうだった?」
「見てくださいこれ!本当にありがとうございます!」
珍しいハイテンションに若干引かれているような気もしなくはないが、そんなことどうでもいい。やや押し付け気味に成績表を手渡すと、花宮さんは数秒じっとそれを見つめていた。そして、
ハッ、と鼻で笑われた。
「お前な、この俺に教えて貰ってんだから1位くらいとれよ」
「……充分じゃないですか。今までからしたら正に奇跡です」
「見ろこれ、俺の」
同時期にテストがあったため、花宮さんの方も成績表が配られたようだ。結果は、421人中1位。これまた安定である。
いやわかってはいたけれど、今回僕だってかなり頑張ったのに。そりゃ進学校でもないし、1位だってとれたわけじゃないけれど。それでも一言くらい褒めてくれたっていいじゃないか。
そこまで考えて、はたと気付く。僕は、褒めてもらいたかったのか?先生に褒められた時、先輩に褒められた時。確かに嬉しかったが、でもそれだけだ。褒められなかったとしても、大して思うところもなかったろう。けれど、花宮さんは違うのだろうか。
ぐるぐると思考の渦に呑まれていると、何かおかしな様子の僕に気付いたらしい花宮さんから、ちょっとバツが悪そうに声を掛けられた。
「……まぁ、よくやったな。お疲れ」
ぽん、と頭を撫でられる。ぱっと顔を上げて見ると、花宮さんは眉尻を下げながら目を細めて微笑んでいた。顔がかっと熱くなり、見られたくなくて隠そうかとも思ったが、しかしこの暖かい手と眼差しは心地良くて、ずっとこのままでいたくて。なんだか自分がおかしくなってしまったみたいだ。
「……ありがとう、ございます」
花宮さんが驚いたような顔をする。首をかしげると、後頭部に手を回され、段々端正な顔が近付いてきて。……唇に、やわらかい感触。
同じテストの日程の中で勉強を見てもらっているから、ということで、テツヤは結構頑張って勉強していたようだった。
知っていたけど、少し意地悪したくて。すると、一瞬不貞腐れたような顔をした後に、困惑したような顔で下を向いてしまったから。どうする、やり過ぎたか。謝ろう、とも思ったが。随分と嬉しそうに報告しに来ていたのを思い出し、そうか、と思い立つ。
頭を撫でてやると、テツヤは頬を少しだけ赤らめながら綺麗に微笑んだ。
こいつ、こんな顔ができるのか。普段が無表情であることが多い分、破壊力は抜群だ。
つい衝動的に、……キス、をしてしまった。
……やべぇ。……止まら、ない。
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