アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
第2章 15
-
父の運転する車から見える景色が、
普段見慣れた道を過ぎ、どこか格式の高そうな見慣れない景色が目に入って来ると、唐突に父は興奮冷めやらぬ口調で、綾人に話し出したーー。
「凄いぞっ!スゴいぞ綾人っ!あの『桜庭家』で開かれるあるパーティーに急遽花が足りないとかでな、父さんの知り合い筋から店にある花の種類を聞かれたかと思えば、なんとっ、急いで持ってきてくれと依頼されたんだ!御代は値段の5倍出すとかで、父さん柄にもなくびびっちゃったよっ」
と、興奮気味に話す父の声を聞きながら、綾人は、
ーー桜庭家…ってあの…?
よくテレビとかでも取り上げられてる?
うそっ、なんでそんな事に??
いきなり思いもよらない情報を、ガツンと目の前に突きつけられて、頭の中はハテナのオンパレードである。
ーー困惑、
ーーーー当惑、
ーーーーーー混迷、
それはそうだ。なぜ、うちのような小さい規模の花屋なんかに、そんな大きな仕事が舞い込んできたのか、真っ白になりそうな思考の中で考えようとしてみるが、答えなど到底分かる訳もなく、
とりあえず、父のこの紅潮し、弛緩しきった表情の訳は分かったと、高ぶる己の精神を落ち着かせて、車外の見慣れぬ景色に、再び目を向けながら、
「桜庭家って、あの桜庭家…?」と、
今更分かりきった質問を馬鹿みたいにしてしまう。
そんな綾人の様子にも、今は気付いていないのか、猛は近頃は滅多に見せる事も無くなった満面の笑みを、その顔に乗せて、
「そーだっ!あの桜庭家だ!まさかこんな幸運があって良いのか!いや、まさに天の助けだな!」
と、棚からぼたもちの如く、思いがけない幸運に子供のようにはしゃいでいた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
22 / 43