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第3章 7
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「えっ…、行くって何処に…?と言うか、大河なんでここに居るの?僕のこと追って来たの…?」
なぜ、いるはずも無い男がここに居るのかと、若干、パニックを起こしかける綾人を微笑ましそうに見つめた大河は、綾人の肩を再び引き寄せると、ちょうど近くにあった3人がけのソファーへと手を引いて座らせてくれる。
そして、自らも綾人の隣へと座り、何故ここへ来たのか、その理由を話し始めた。
ーーそう。その衝撃的な言葉をもって。
「綾人。俺はここへ、結婚を申し込みに来たんだ」
ーー…。
ーーーー…。
は?
一瞬、頭の中が真っ白になり、
何を言われたのか、言葉の意味が理解出来なかった。
ーーケッコン、けっこん、結婚っっ!?
その衝撃的な事実に、声もなく固まった綾人の代わりに、こちらの様子を、少し遠くで見守っていた父が、代わりに言葉を返す。
「あっ…、あのっ、けっこんっって、貴方はアルファ性ですよね…?綾人は…、息子は、確かにオメガ性ですが、私を見ての通り、親がベータです…。つまり…、」
みなまでは言えなかったのだろう。
言葉尻に向かうにつれて、父の声も小さくなっていった。
しかし、言いたい事は伝わっただろう。
ーー下位種のオメガ性なのだ。それを承知で結婚すると言うのか…?
綾人は、父が話すのを聞きながら、顔は膝に置かれた震える両手を、青褪めた表情で一心に見つめていた。
真実を知った大河が、どんな反応をするのか確かめるのが怖かったのだ。
一瞬、その場が静寂に包まれたその時、
耐えられず綾人はギュッと、涙の滲んでくる双眸を閉じた。
ーーしかし、
すぐに温かく、甘い匂いに包まれて、驚いた綾人は、自分を抱き締めた大河を仰ぎ見る。
「なんだ。そこを気にしてたのか。綾人お前が誰でも、どんな存在でもいいんだ。ただ、俺はお前が欲しい。純粋に、天野綾人という一人の人間に惚れたんだ。だから、俺と結婚して欲しい。ーー必ず幸せにする。綾人も、そのお腹の子も。」
そう言って、綾人としっかり目線を合わせると、優しく微笑み、頬に流れる涙をそっと、拭ったのだった。
ーー…ああ、やっぱり、お見通しなんだね。
ーー僕が、身籠ったことも、
ーーー貴方に惚れていると言うことも…。
◇
それから、とにかく綾人が落ち着くまでの間、優しい抱擁を続けていた大河は、あらためて己の名前を名乗ったのだが、
そこでもまた、衝撃が走る。
「そう言えば、綾人には下の名前しか教えていなかったな?俺の苗字は桜庭だ。ーー桜庭大河。」
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