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第3章 9
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唐突な息子の宣言に、目を見開かせたかと思えば、途端に二人の表情は険しくなり、頭に血を登らせて、父親の方が勢いよく立ち上がる。
「ふっ、ぶざけるなっ!!!なにが、結婚だっ!!!お前には立派な許嫁が居るだろうがっ!!!!」
と、唾を飛ばしながら怒鳴りつける。
しかし、その言葉を聞いて一番衝撃を受けたのは、綾人であった。
ーーーえ…?許嫁…、?
そんな人が居るとは知らなかった綾人が、物凄い剣幕で怒り狂っている自分の父親を、余裕の笑みで見つめている大河の顔を仰ぎ見て見れば、
そんな不安な綾人の心の機微に気づいた大河が、綾人の頬にそっと手を添えると、こめかみにチュッ、と軽くキスをした。
「大丈夫だ。あれは家が勝手に決めた許嫁なんだ。俺は相手を愛して無いし。愛した事もない。」
そう言って、僕の不安を取り除いてくれる。
目の前で自分の言葉を無視された大河の父親は、ブルブルと怒りに震えながら、今度は綾人を視界に納め、声を荒げた
「だいたい何だっ!!!そのオメガはっっ!!そいつと結婚するだとっ!?ふざけるのも大概にしろ!!聞いたぞ!そこにいるのは下位種のオメガだそうだな!下位種だぞ、下位種!!そんなのがまともな子供を産めるわけが無かろう!!その腹の子も降ろさせろっ!!」
いっそうに目を血走らせながら、こちらを睨みつける大河の父に、綾人が我が子を守ろうと動く間もなく、大河が綾人を父から見えないように己の腕の中へと隠す。
「この子は綾人と俺の大事な宝物だ。降ろさせませんよ。貴方達に認めて貰おうとは始めから考えていない。今日はこの家と縁を切るために来たんだ。」
またも驚くような事を口走った大河に、綾人は顔を見上げた。大河は、顔こそ自分の父親の方を向けていたが、
ギュッと力強く、綾人を抱き占めてくれる。
大河の絶縁宣言に、流石に驚いたのか、それまで勢いよく喋っていた大河の父も、言葉を詰まらせてだまってしまった。
しかし、
それまでじっと状況を観察していたのか、言葉を挟まなかった大河の母親が、綾人を守る息子の姿を嫌そうに見てから、ようやく口を開いた。
「だったら、妾で良いじゃない。わざわざ結婚しなくったって、子供を産ませて、あとは好きにすれば良いわ。でも、正妻はちゃんとした所の子でないと駄目よ。もちろん、跡取りも正妻が産んだ子よ。下位種オメガがアルファの子供を産むなんて、、ほんとどうかしてるわ。本当は産ませたく無いのよ?でも、貴方がそこまでこだわるなら、妾なら許すわ」
己の母親の言葉に、酷く冷たい目を向けた大河は、
「…話になりませんね。兎に角、この家とは今後一切縁を切らせてもらう。こちらも干渉しないので、そちらも俺達に一切干渉して来ないでくれ」
とう吐き捨てて、大河は綾人を伴って、部屋を出て行こうとしたーーーー。その時、
「そ、そんな事許さんぞ大河っ!!、この家から一歩でも出てみろ、そのオメガを始末してやるからなっ!!その赤んぼ…っーーーーー」
先の言葉は続かなかったーーーー。
それまでとは比べものになら無い、大河の威嚇フェロモンが、部屋中を一気に満たしたからだ。
ーー息苦しい…
ーー息ができ無い…
ーーやめてくれっ!!死んでしまうっ!
美形が本気で怒ると夜叉になるーーー。
その美貌から、一切の表情を消して、
ただ静かにフェロモンだけで、桜庭家の面々を威嚇して見せた大河は、
己の腕の中で、大事に、大事に守っている宝物をそっと抱き上げ、いっそ優雅にその場を後にした。
後に残された桜庭家の面々は、
本気で向けられた大河の殺気を、肌で、脳で、本能で感じ取り。
恐れ、慄き、その後も、しばらくの間動くことも出来なかったーーー。
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