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第3章 12
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そこへ、自称李土の親衛隊を名乗っている、男にしては可愛い感じの青年が、綾人達の方へと近づいてくるのが見えた。
「おはようございますっ!あのっ李土様。僕もご一緒させて頂いてもよろしいでしょうか?」
その青年の言動に、こちらを見つめていた沢山の学生達が途端に騒めきだす。
ーなに、あの子!?
ー桜庭様に軽々しく声をかけるなんて!
ー同じ一年だからって調子乗り過ぎよっ!
ーベータのくせに馴れ馴れしい!
周りはありえない珍事に、興奮気味に騒ぎ立てるが、実は僕も少し驚いていた。
李土は、僕達家族の前ではいつも穏やかだし、とても優しいので、勘違いしてしまうのだが、
懐に入れていない他人には笑顔ながらもかなり冷ややかな対応なので、これまで李土の美貌にふら、ふらっと、寄って来た人々は、ことごとく、絶対零度の対応に沈没していったのは有名だ。
今では、抜け駆け禁止の『みんなの桜庭李土様』という位置付けで、協定を結び。
誰も抜け駆けすることなかれ。というかたい掟が李土の信奉者の中で出来上がった破ってはならない絶対のルールだ。
自分一人だけが相手にされないのでは無く、みんな同じ。なら、我慢できる。
そうやって、大学入学初日から作られた硬い掟を堂々と突破しようとする者が目の前に現れたのだ。
ーーしかも、肝心の李土ときたら
チラリと一瞬その子に視線を向けたかと思うと、綾人の腰を片手で軽く抱き寄せただけで、足を止める事さえしていない。
そんな冷たい態度にもめげる事なく、同じ一年生らしいその男の子は尚も李土に言い募る。
「あのっ、いきなり声をかけてしまい申し訳ありませんっ!僕っ、田島瑞稀と言います!李土様の親衛隊に入っていて、専攻も李土様と同じ医学部なんですっ!僕、初めて李土様の事を知ってから貴方に認めて貰いたくて、勉強もめちゃくちゃ頑張って、ーーー」
一生懸命話しかけているのは分かるのだが、いかんせん相手に聞く気が全くないので、その子の声だけが虚しく空気を震わせる。
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