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「もういい! 君の好きにしろ。二度と顔も見たくない」
「ソウゲツ様っ」
「お別れだ!」
吐き捨てるようにそう言うと、ソウゲツは若いオスを空に向かって力いっぱい放り投げた。荷造りもそこそこに自分の巣を明け渡すと、振り向きもせずに飛び去っていく。
「とんでもない日だ。こうなったらやけ酒だ。今夜は徹底的に飲んでやるぞ!」
ソウゲツはひとり見晴らしの良い街の教会までやってくると、広い屋根の上にどっかりと腰を落ち着けた。
空に浮かぶ秋の星座を肴にほろ苦いワインをグイっとあおる。先程くれてやった巣の中で「これだけは」と譲らずに持ち出してきた、とっておきの上物だ。
本当はあのメスと二人で飲むつもりだったのに。
「みじめだな......。いま、この季節に独り身のツバメは私ぐらいのものだろう。ふん、まあいい。今はどんな女とも所帯をもつ気持ちになれん」
それからというもの──。酒浸りとなったソウゲツは、来る日も来る日もワインをあおった。たしなめてくれる人もなく、ひとりでグラスを満たしては、あっけなく空にする哀れな毎日。
彼自身にも意外なことに、この出来事をふっきるためには多くの時間が必要だった。
・・・・・
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