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「なんだ、雨か?」
それにしてはやけに温かく感じたのだが……。
不思議に思って見上げると、思わず目を疑うような光景がそこにあった。
なんと、さっきまで晴れやかに微笑んでいたはずの黄金の像が、表情を一変させ、悲しみに沈んだ声で嗚咽していたのだ。
緋色の瞳には大粒の涙が浮かんでいる。
「これは驚いた。泣いているのか? 『幸せの王子様』が……?」
ソウゲツは怪訝に思ったが、すぐに胸のポケットから愛用のハンカチーフを取り出すと、男の子の顔の近くまで羽ばたいていった。
「これを使ってください。よかったら」
「え……あ、あなたは誰!?」
この状況に同じく驚いたのだろう王子様は、パチパチとその可愛らしい目をしばたかせていた。その仕草はまるで本物の男の子そっくりである。
「私は通りすがりのツバメです。今夜の寝床として君のつま先を借りています」
「ツバメさん、人間の言葉がわかるの?」
この問いかけに、ソウゲツは首をすくめた。
「私もこうして君とおしゃべりできるのが不思議だよ。さっき君が流した涙が顔に当たったから、そのせいかもしれないな」
「そうなんだ......なんだか悪いことをしちゃったみたい。ゴメンなさい……」
「謝ることはないさ。何か思うところがあったんだろう?」
ソウゲツは王子様の頬に流れた涙をハンカチで丁寧に拭き取った。
すると、男の子は安心したように「うん」と頷いてくれた。
「こうして言葉を交わせたのも何かの縁だ。『幸せの王子様』、よかったら私に話を聞かせてくれませんか?」
もともと面倒見のよいソウゲツは、この不思議な像の涙の理由に一晩寄り添ってやるつもりでそう訊いた。
促された王子様はゆっくりとしゃべりだしたが、その口から語られた内容はなんとも驚くべきものだった。
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