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「あっ!」
王子様は広場に戻ってきたソウゲツの姿を見つけると、待ってましたとばかりにパアッと顔を輝かせた。
「おーいっ、こっちだよー! おーいっ」
そうやって嬉しそうに叫ぶ少年の笑顔は、夜間飛行を終えたばかりのソウゲツの気持ちを温かく癒してくれた。
もしも少年の足が台座から離れて自由に動けたなら、パタパタと音をたてて脇目も振らずにこちらに向かって走ってきそうだ。
ソウゲツは思わず笑ってしまった。
可愛い人だと思った。
そういえば先ほどの話によれば、かつては本当の男の子だったと言うから、周りの人たちは彼のことをさぞや手塩にかけたに違いない。
それと、嬉しいことがもうひとつ。
ソウゲツにとって誰かと帰還の挨拶を交わすのは随分久しぶりのことだったのだ。
こんな風に。
「ただいま戻りました」
「お帰りなさいツバメさん! 僕の頼みをきいてくれてありがとう。寒かったでしょう?」
「ああ、今にも凍えそうだ。しかし、なぜだか気持ちは春のように暖かいんだ。きっといいことをしたからだろうな」
それを聞いた王子様は「えへへ」と頬を紅潮させてニッコリと目を細めた。
「そう言ってくれると嬉しいよ。あのお母さん、今夜は安心してぐっすり眠れると思う。あなたが僕のところに来てくれて本当に良かった……。ねえ、いっぱい飛んで疲れたでしょう。今夜はもう眠る?」
「そうしよう。明日はいよいよ旅立ちだ」
「それじゃあ、僕の肩にとまってよ。つま先なんかより、こっちの方がずっといいから」
「そうかい? それじゃあ、お言葉に甘えよう」
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