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「えっ!? わわっ、な、何だ!? 一体何が起こったんだ......!?」
青年は真っ青な顔で、両手を床についていた。
あまりの驚きに巨体を浮かせて飛び上がり、気が付いたら椅子から転げ落ちていたのだ。
青年は椅子を杖替わりにしてヨロヨロと立ち上がると、今もまだ微かに痺れている右手をさすった。
「うーん……何だか黒い男に思いっきり胸ぐらを掴まれたような気がしたんだけど、あれは幻覚だったのか? はは......そんなものを見るようになったら、いよいよ僕はもうダメだ。作家になる夢だって......」
これで終しまい......。
そう呟くと、灯りを消すため、静かにランプに手を伸ばした。
すると、そこに見えたのは......!
「こ、これは......! なんて美しい宝石なんだ。この世のものとは思えない。だけど、一体どうしてこんな所に?」
先ほどの奇妙な男の幻覚といい、今夜はおかしなことばかり起きる。
青年は突如目の前に現れた身に覚えのない物体に恐る恐る手を触れてみた。
それは、まるで氷のようにキンと冷えきっていた。ついさっきまで外にあったのだろうか?
だとすれば、何者かの手によってこの部屋に持ち込まれたことになるが......。
「……そうか。これはきっと僕を応援してくれる数少ないファンからの贈り物だ。なかなか思うように新作が書けずに絶望していた僕を励ますためにプレゼントしてくれたんだ! 『がんばれ』って……!」
そうとしか考えられなかった。
「劇作家への道はもう諦めるつもりだったけど、こうやって信じて待っていてくれる人がいたんだな。ありがとう! どこの誰だか知らないけれど、素晴らしい贈り物だ。なんだか生きるチカラが湧いてきたよ。ようし、書くぞ! 書くぞ! なんとしても、この劇を完成させてやるっ!」
青年は宝石を固く握りしめ、声高らかにそう叫んだ。
「こうしちゃいられない」とばかりに床に散らばった書きかけの原稿用紙をガサガサとかき集めると、机に広げ、すぐさま執筆の続きに取りかかった。
その表情にはいかにも若者らしい生気がみなぎり、夢を逃しかけていた右手には、しっかりと銀色のペンが握られている──。
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