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「落ち着いてくれ。実を言うと、私達ツバメの世界ではパートナーの浮気はよくあることなんだ。渡り鳥というのは海を越えるリスクも大きく、生存が厳しい。誰もが限られた人生の中で一羽でも多くの子孫を残そうと必死なんだ。あの女だってそうだったんだ」
ソウゲツは少年をたしなめたい一心で諭したが、王子様はそんなの関係ないとばかりに必死の表情でかぶりを振った。
「僕なら……! 僕だったらソウゲツを待ってるな。あなたはきっと帰ってきてくれるから、何があったってずっと信じて待ってるよ」
汚れを知らない少年の言葉に、ソウゲツは不覚にも胸を打たれてしまった。
男女のしがらみを嫌というほど知り尽くした今、こうした言葉に意味がないのは百も承知している。
それなのに......。
「本当かな......。私がどこかのバーで飲んだくれている間に、いい男が誘ってくるかもしれないぜ?」
「男になんて興味ないよ。言ったでしょ? 僕はソウゲツを待ってるって 。だから、あんまりヤキモチ妬かせないで............あっ!」
これは語るに落ちたと言わざるを得ない。
「ち、違う。あなたが悪いんじゃないんだ。ただ僕が勝手に......僕が......」
王子様は自分の口から飛び出てしまったその言葉を恥じらうようにモジモジすると、再びリンゴのように頬を赤く染めてしまった。
「んん、なに言ってるんだろ、僕。変なこと言ってゴメンなさい......」
その瞬間、ソウゲツの心臓は何者かに呼び覚まされたかのようにドクンと高い脈を打った。
先ほどまで凍える寒さに震えていた筈なのに、今は中心から込み上げてくる熱い血潮が身体全体に行き渡り、すみずみまで生き還っていくようだった。
これはいけない......。
ソウゲツは自分の心と身体の変化を認めて戸惑った。
人間の男の子、ましてや像の姿をした人をどうにかしたいと思ったのは生まれて初めてのことだった。
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