アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
22
-
「神様......どうして? どうして僕をこの街の像としてお造りになったんですか? 僕、今とっても困ってます。いったい、いつまでここに突っ立っていればいいんでしょう!?」
王子様はついに叫んでしまった。
祈ることはあっても、神様にクレームをつけるのは生まれて初めてのことだった。
「ソウゲツが遠くに行ってしまいます......!」
彼は明日には自分には手の届かない遥かな国へと旅立ってしまうのだ。
それがツバメにとって自然の行動だと分かっているが、異国の地は、きっとソウゲツに新しい出会いをもたらすだろう。
「彼は優しいし、空を飛ぶ姿がとてもカッコいいから、きっとツバメの女の子達が放っておかない......。彼は律儀だから、春になったらまた僕のところに来てくれると思います。だけど......」
その時、彼の隣には可愛いつがいの女の子がいる。
そんな気がする。
それは王子様にとって泣きたくなるほど耐え難い場面だが、どんなに喚きちらしたところで肝心のソウゲツの心は得られないのだ。
なぜなら。
「僕はツバメじゃないから......」
そう呟くと、王子様はルビーの瞳からシクシクと涙を流しはじめた。
彼が自分を選んでくれる可能性など、はじめから無かったことに気がついたのだ。
「うう、それならせめて嫌われたくない......。明日はちゃんと笑顔でお見送りしないと......!」
王子様はパチパチと瞬きを繰り返しながら、溢れる涙を必死の思いで消そうとした。
ソウゲツが戻って来る前に、なんとかいつもの顔に戻したかったが、少年の意思に反して涙は後から後から流れてきて止まらなかった。
・・・・・
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
22 / 47