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「それに......」
王子様はそこまで言うと何故か口をつぐんでしまった。目の端には、うっすらと涙が浮かんでいる。
その様子を見たソウゲツは何も言わずに少年の頬から手を離して、静かに距離をとった。
「ゴメンね......本当は上手にお別れしたかったんだ。だけどムリだ。これ以上優しくされたら僕、かえってつらくなっちゃう......」
まるで今生の別れのようにそんなことを言うから、ソウゲツは胸が締め付けられる思いがした。
自分の帰還が叶わずに、もう二度と会えないことすらこの少年は覚悟しているのかもしれない。
それでも空を飛ばなければ生きていけないのだ。ソウゲツは自分が渡り鳥であることを、これほどもどかしく思うことはなかった。
「そうか......。私としたことがすまなかったな。だけどこれだけは信じてくれ。君のことは一生忘れない。美しい瞳の赤い色も......いや、話はまた今度にしよう。さようなら......」
そう言いながら雄々しく翼を広げて飛び立つソウゲツに、王子様は精一杯応えるように口元を緩めた。
「さようならソウゲツ......さようなら......!」
その表情は微笑んでいるようにも、悲しみに泣いているようにも見える。
しかし、その時だった──。
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