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「ソウゲツ!?」
王子様はツバメの姿を目に入れるなり「信じられない」という顔をした。
「ああ、やっぱりソウゲツだ! 良かった......戻ってきてくれたんだね」
ソウゲツは王子様の言葉に頷くと、広場の上空を旋回したまま答える。
「やっぱり君が呼んだんだな。あんな声を出して、いったい何があったんですか?」
ひとまず何事もない少年の様子を見て安心したが、ソウゲツはこれ以上彼に近づこうとはしなかった。
可愛い姿を目にした以上、本当はもう一度この手で触れたかったのだが、このまま降りてしまったらもう二度とこの場所から離れられなくなる。
そんな思いが彼を躊躇させたのだ。
「あなたが急いでるのはよく分かってる。だけどお願い。あとひとつだけ僕の頼みを聞いて欲しいの!」
この期に及んで王子様がそんなことを言いだしたので、ソウゲツは耳を疑った。
「困ります……」
互いに辛い別れを決心したはずなのに、これでは振り出しに戻ってしまう。
「そんなこと言わないで。本当にこれで最後だから!」
「王子様……申し訳ない。これ以上は本当にもう無理なんだ。ツバメの仲間達は皆とっくにヨーロッパを出ています。この街にはすでに冬が来ている。空から雪が降ってきたら、いよいよ私は飛べなくなります」
それは彼のような鳥類にとって、いわゆる死を意味していた。
けれど、王子様は「それは心配ない」と言う。
「大丈夫。だって、すぐに終わるから。ほら、僕らのいる広場のはじっこにうずくまってる女の子が見えるでしょう? 彼女は小さい時に両親を亡くして、今は親戚のおじさんに引き取られてる。家では厄介者扱いされてる上に、貧しい家計の手伝いをしてあんなに細い身体でマッチを売って暮らしてるんだ。それでも毎日懸命に生きてきた。だけど今日という今日は限界だ。さっき躓いた拍子に売り物のマッチを水溜まりに落として全部ダメにしてしまったみたい。こんなことは初めてだよ。あの子のおじさんは暴力的で、すぐに怒って手を上げるんだ。こんなことが知られたらあの女の子はタダじゃすまない。彼女がおじさんに殴られてしまう前に、お願いだソウゲツ。僕の右目のルビーをくり抜いて……!」
それを聞いたソウゲツは、頭の中が真っ白になった。
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