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・・・・・
王子様はしょんぼりしていた。
「ああ、もうおしまいだ……」
これで、完全にソウゲツに愛想をつかされてしまった。
無理もない。
さっきは女の子を助けたいあまり必死で彼にすがりついたが、こうしてふられて1人ぼっちになった今、考えてみれば自分が彼にしてきた仕打ちは目に余るものだった。
「僕って、本当に救いようのない大バカだな......最後の最後まで自分のことしか考えなくて......」
それでも街の人達を想う気持ちに嘘はつけない。自分にできることなら、何でもしてあげたいのだ。
劇作家の青年や女の子の生きる助けになるのなら、この目を差し出すことくらい惜しくはない。
しかし……もしもこれが逆の立場だったらどうだろう?
自分はソウゲツの目をくり抜くことができただろうか?
「そんなの無理に決まってる」
言うまでもないことだ。彼の目から光を奪うなんて、そんなこと、とてもじゃないができはしない。
例え「どうしても」と懇願されても、なんとか宥めて説き伏せて、それでもダメなら喚き散らし、最後には土下座さえして許しを請うたかもしれない。
なぜなら。
「あなたが好きだから......」
その時、王子様はふいに左胸のあたりにドクンドクンと打たれるような痛みを感じた。
それは黄金の像になってから初めて知る、物理的な痛みだった。
少年は突如身体に走った不思議な感覚に戸惑ったが、これはきっと彼を傷つけた罰だと思った。
「ソウゲツ、ごめんなさい......!」
春になっても、叩きつけるように別れの言葉を残して去っていったあのツバメは、もうここへは来てくれないかもしれない。
「ごめんなさいっ!!」
それでも、王子様は信じて待ちたかった。
願いを聞いて欲しいからではない。
ただ彼に会いたい。
そして謝りたい……。
・・・・・
「そんなに大きな声を出さなくたって聞こえているぞ」
「え......?」
聞き覚えのあるその声にハッとして空を見上げると、広場の上空を優雅な身のこなしで旋回するソウゲツの姿が目に入った。
王子様はしばらくあっけにとられた気持ちで呆然と彼を目で追っていたが、ツバメはやがて目の高さまで降りてくると、王子様が握った拳の上に静かにとまった。
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