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王子様は涙で滲んだ瞳をパチパチとしばたかせると、おずおずと彼に話かけた。
「ソウゲツ......戻ってきてくれたの?」
「ご覧のとおりです」
「ありがとう......僕、もう二度とあなたに会えないんじゃないかって思ってた」
「おや、信じて待っていてくれたんじゃなかったのか?」
ソウゲツは肩をすくめると、わざと意地悪な表情で笑ってみせた。
「だ、だって、すごく怒ってたじゃないか! あんなに怖い顔をされたら誰だって......!」
思わずカッとなった王子様は勢い任せにそこまで言ったが、すぐにキュッと口をつぐんで大人しくなった。
こちらを見ていたソウゲツの目が、いつの間にか優しく微笑んでいたからだ。
王子様はそんな彼の表情が、あの日出会った時からたまらなく好きだった。
包みこまれるような穏やかな眼差しを受けると、自然と笑顔が戻ってしまう。
「うふふっ......。僕、どうしても最後にあなたと仲直りがしたかったんだ。ワガママで、なんにもできない僕だけど、ずっとあなたのことを待ってるから、春になったらきっとまた戻ってきてね。約束だよ......」
こうして顔を合わせて再び笑いあえた今、このお別れに思い残すことはもう何もない。
幸せの王子様はそう信じていた。
しかし、ソウゲツはその言葉に恭しく一礼すると、凛々しい翼を広げて羽ばたき、王子様の顔の前まで接近した。
そのまましばらくの間、黙って少年の緋色の右目に見入っていたが、やがて黄金の頬に手の平を添えると、少年を怖がらせないように、その顔をゆっくりと近づけていった。
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