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「あっ......!」
王子様はハッとした。
気がついた時には、右の瞼にソウゲツの吐息がかかっていた。
左右の頬にひんやりと触れた指先は悲しくなるほど冷たいのに、瞳を啄む唇はまるで生命を燃やしているかのように熱かった。
「ソウゲツ......」
彼が今していることを、王子様はすぐに理解できた。
「どうして......?」
その問いかけに彼は何も答えなかった。
代わりに瞳を彩る長い睫毛の縁に潤んだ舌を差し入れると、少しずつ丁寧にルビーを押し出し、角度を変えながら徐々にくり抜いていく。
それがあたかも切ない口づけを受けているようで、甘美な緊張に耐えきれない王子様は図らずもわなわなと全身を震わせてしまうのだった。
先ほどからしきりに主張している左胸の違和感もひときわ鮮明に蠢いてドクドクと強く打ち付けてくるし。
ああ、これではまるで......。
「(僕、生きてるみたい......!)」
ずいぶんと懐かしいこの感覚はかつて人間だった自分もよく知っている。
間違いない。
「(あなたが呼び覚ましてくれたんだね──)」
ソウゲツ......!
しかし愛しい彼の顔をもう一度よく見たいと願った時にはすでに王子様の視界は真っ暗になっていた。
この街を、人々を、そして遥かな時を映してきた少年のルビーの瞳。
その最後のひとつが外されたのだ。
・・・・・
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