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それからというもの──。
ソウゲツは誓った言葉の通り「幸せの王子様」の代わりとなって、広場から、そして空から、来る日も来る日もこの街の人々の生活を見守り続けた。
街の人々は、本来ここにいるはずのない季節はずれのツバメの姿を見かけると、皆一様に怪訝な顔をした。
それでも、この街のシンボルである王子様の像を寝床とし、愛しげに寄り添うツバメの存在は満更でもないらしく、取り立ててどうこうしようとは思わなかったようだ。
ある朝──。
広場を通り過ぎる親子の何気ない会話が聞こえてくる。
「見てママ! あのツバメさん、今日もスイスイお空を飛んでるよ」
「まあ、本当。だけど、ずいぶん寒そうね。この季節じゃ、食べる物にも困るでしょうに」
母親の言葉に男の子は得意そうに「ううん」と首を振った。
「そんなことないよ。あのツバメさん、毎日ピカピカのご馳走を食べてるもん」
「まあ、この子ったらバカなことを言わないの。幸せの王子様に笑われますよ?」
「えー? なんでぇー?」
「それにしても、この王子様の像もしばらく見ないうちにずいぶん薄汚れてきちゃったわねえ。前はもっと金ピカだったと思うんだけど......」
母親はそう言って不思議そうに首を傾げたが、すぐに「まあいいか」と朝の貴重な時間を惜しむように男の子の手を引いて行ってしまった。
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