アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
41
-
「旅立ちの時がやってきました……いよいよお別れです」
それを受け入れられない王子様は大声で叫んだ。いじらしく左右に首を振り、必死の表情で訴える。
「いやだ……! そんなのイヤだ!!」
王子様の悲痛な叫びに、ソウゲツは何度も頷いた。そして努めて穏やかな声でこう言った。
「知ってるかい? この世に生まれたほとんどの生き物は、誰かに最期を看取られることなく、たった一人で死んでいくんだ。こうして愛する人に泣いてもらえた私は世界一の幸せ者さ。もしも生まれ変われたら、もう一度ツバメに生まれます。また君のために空を飛びます……」
「ソウゲツ……!!」
ツバメは、そこでゆっくりと目を閉じた。
羽ばたきをやめた痩せた身体が、王子の足元に向かって真っ逆さまに落ちていく。
ドサッという静かな音が早朝の広場に悲しく響いた。
続いて、何かが砕けるような「バキリ」という音。
それはあまりの悲しみに耐えきれず、押し潰されてまっぷたつに割れてしまった王子様の心臓だった。
白い雪が、彼らの亡骸の上にしんしんと厚く降り積もっていく。
静寂。
その様子は、まるでふたりの魂を天が慰めているようだった。
・・・・・
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
41 / 47