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深い深い意識の底から浮上すると、まばゆい光を瞼に感じた。
暖かい。
ゆっくりと目を開けて起き上がると、そこには見たこともない世界が広がっていた。
どこまでも続く緑の草原。爽やかな風。
側には水音を奏でる小川の清いせせらぎがあり、白や黄色の花の周りを青色に光るチョウチョがひらひらと飛び交っている。
まさに風光明媚である。
ソウゲツは夢うつつにその場から立ち上がると、真新しい立派な燕尾服についた草を手で払った。
そのままグッと身体を後ろに反らし、伸びをしてみる。
「いい気分だ。それにやけに身体が軽いぞ。ここはいったいどこなんだ……?」
今まで世界中を旅してきたが、このような場所に心当たりはない。
首を傾げていると、小川を挟んだ向こうの木々の間から自分の名前を呼ぶ声がした。
「ソウゲツーっ!!」
溌剌としたその声に振り向くと......
なんということだろう。
燕尾服を着たスラッと美しい少年が、満面の笑みを浮かべてこちらに向かって羽ばたいてくるではないか。
「はっ……! あ、あの子はもしや!?」
ソウゲツは思わず自分の目を疑った。
まさかと思って両腕を大きく広げると、ツバメの男の子は嬉しそうな声を上げてパタパタと胸の中に飛び込んできたのだった。
「わーい、つかまえた! あははははっ」
「驚いた。本当に君なのか? 『幸せの王子様』」
「受け止めてくれてありがとう! うんっ、そうだよ。僕だよ、ソウゲツ」
男の子は胸にうずめていた顔を上げると「ほらね」と言うようにキラキラと輝くルビーを思わせる緋色の瞳でこちらを見てくれた。
ああ、この瞳。この眼差し。
君に、こうしてまた会える日が来るなんて……。
ソウゲツは嬉しくてたまらなかった。
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