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七話 由那としての朝
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目が覚めたら朝だった。
全裸で床に仰向けで寝ていたからか体が痛む。ディルドも尻に嵌ったままだ。
体に撒き散らした精液は乾いており、酷い臭いを放っている。
千優はそんな臭いにすら興奮してしまっていた。
「あ……お尻……もっと、いきたい……」
尻に差し込まれているディルドを手で掴むと、激しく出し入れをした。快楽を追い求めた。
理性が働かない。射精する事ばかり考えて脳が溶けたのかもしれない。
「き……木元ぉ……」
ジリリリリリリリ!
大音量で目覚まし時計の音に、千優は完全に目が覚めた。
我に返る。理性が働き始めると、自分の今の状態に愕然とした。
「あ……あ……、嘘だろ?」
こんなの俺じゃないこの体のせいだ、そう思っても千優のショックは大きい。
鳴ったままの目覚まし時計を消して朝もう一度シャワーを浴びた。
昨日性欲を発散させたからか、シャワーの湯にじんわりと体は火照る程度で、昨日ほどの苦しみはなかった。
浴室から出て、髪を乾かし、時計を見るともう七時を回っていた。確かここから学校まで四十五分はかかる。
「やっべ!」
千優は慌てて制服に着替え、綺麗に整った勉強机を漁って授業の準備をする。
とりあえずパンを焼いて口に咥えて部屋を出た。
寝室に撒き散らした精液や玩具はそのまま放置されている。
由那と同じ行動をしたという事だろう。
駅までの近い道のりを走り、来た電車に乗った。
満員電車となっている上りではなく、空いている下り電車だが、感じるのは怠さだけだ。
何故学校の近くに部屋を借りなかったのか。
忘れずに持ってきたスマホを握りしめ、昨日登録した由那にメールで苦言を送信した。
『どうしてお前んち学校から遠いんだよ?』
返事は一分とせず、返ってきた。
『おっはよん! 元々持ち家だからね。俺が恋坂中に進学するってんで、使ってない部屋使えば? って事になって、そこに住み着いてる。居心地いいだろ?』
『広過ぎて落ち着かない』
『広くていいでしょ。それより笑顔でな!』
笑顔で……これから由那にならなければならない。可愛く、アイドルとして、ファンの期待に応える。
ボッチで教室の置物並に存在感のない千優に出来る訳がなかった。
学校の最寄り駅に着くと、親衛隊の三人が既に待っていた。
「ユイ〜おっはよ!」
宇田尚睦。ウタが俺の姿を見て手をブンブン振った。爽やかなスポーツマンが白い歯を見せて気持ちいいくらいに笑う。
「お、おはよう」
一人一人に挨拶するのも変かなと思い、俺は三人に向けて挨拶をした。
そういう細かい動作は俺にはどうしていいか分からなくなる。
「おはよう、ユイ。なんか元気ない?」
「え、そ、そんな事ないよ」
小桜詩。ウタに心配そうな目を向けられる。聡明そうな顔立ちにかかる眼鏡がよく似合っている。ミステリアスという言葉が確かに似合う。
「おはよう。昨日、しなかったって聞いたぞ? どうしたんだ?」
ギンッと剛一蕗、ヒイロに睨まれる。睨んでいるように見えて心配しているのだ。
180cmを超える大柄な体躯は一瞬恐ろしさを感じてしまう。
「もう少し我慢してみようかなって」
「したくない時もあるだろうしね」
「そうそう。我慢出来そうならいけるとこまでいってみようか?」
千優が苦笑して答えると、ナオ、ウタが千優の体だけでなく精神面までも心配した。
「でも、なんからしくないなって」
だが、ヒイロに不信の目を向けられる。
こんな繊細とは程遠いような男に入れ替わりの事を勘づかれたのか、と焦りが走る。
どうにか余裕のある表情でヒイロを見つめ返した。
「やる気がなくて断るにしても、ユイならフェラくらいするだろ? 結構待ったのに、ただ断られたって、どうしたんだ?」
ヒイロの後輩なのに邪険に扱ったと思われたのだろうか。だが、千優の考えとは裏腹にヒイロは優しく頭をポンと撫でた。
「体調、悪いんじゃないのか?」
「ヒイロ……」
「辛かったら言ってくれ、ユイが辛い事が俺には辛い」
きゅんっと胸が苦しくなった。体温が上昇していくのが分かる。こんな男になりたいというヒイロへの憧れだろうか。
「ヒイロ、ありがとう。ナオもウタもありがとね。大丈夫、ちょっと気分じゃなかっただけだよ」
これでヒイロだけ特別扱いしたなど思われるのは心外だが、誰がどう思うかは分からない。
なるべく平等を意識しながら会話を続けた。
校門に着いて圧倒される。十数名の男子達が千優達を出迎えた。
「ユイ君! おはようございます。荷物預かるよ!」
代表としてだろうか、一番前にいた同じクラスの川崎が手を差し出した。
朝、鞄を預かってくれる人がいるから笑顔で渡す事! と由那に言われている。
千優は言われた通りに笑顔を作って鞄を渡した。
「えっ……と、あ、お願いします」
「……ユイ君? どうしたの?」
「えっ! 何が?」
どこかおかしいところがあったのか? 千優の背中を冷や汗が伝う。
「いつもなら、助かるぅ〜って言って渡してるよね?」
「そうだよな。なんかぎこちない?」
「いきなり謙虚に? ……そんなユイ君も可愛いけど」
周りのざわめきでどんな失態をしたのか納得した。
謙虚にしてはいけない、それは千優にとって難しい事だ。
来須はもう登校しており、普段の千優と同じようにうつ伏せてこちらを窺っていた。
誰からも声を掛けられず、存在しているかどうかすら怪しい。自分の立ち位置を客観的に見て、少し寂しくなった。
「ユイ君、鞄かけておきました!」
川崎は特に由那の熱いファンだ。
同じクラスメイトだというのに敬語で、熱意が半端ない。とにかく熱い。
「ユイ君、一限目の準備しておいたよ」
「ユイ君、飲み物飲む?」
何もしなくても周りが全てを用意してくれる。どこかのお屋敷のゲストにでもなった気分だ。
「皆、ありがとう!」
とりあえずクラスメイトの名前も全員は覚えていないので、複数人に何かしてもらったら「皆ありがとう」で対応。訝しむ者が何人かいたが、千優にはこれが限界だ。
だが、ニコッと笑顔を向けると皆が皆顔を赤くし、満足して席へ戻っていった。
由那はまさにアイドルだと、千優は身をもって感じた。
皆が散ると、次は親衛隊の三人が寄ってきた。
「今日はどう? まだ気分じゃない?」
今日セックスをするかどうかをウタが聞いてきた。
「えっ……と」
「ていうか、今日何日目?」
「七日目」
ナオの問いに千優が困惑していると、ヒイロが答えた。一番由那の事に詳しい。さすが筆頭ファンである。
必死に心配する目を向けてくるのは、ヒイロただ一人。
ナオとウタも来須に惚れていると千優は聞いていたが、認識違いのように思えた。
「ユイ、本当に大丈夫なのか?」
「……大丈夫だよ」
千優は苦笑した。今も制服の袖が当たっているだけで、ジンジンと腕が感じてしまっている。背中や腰、脇等も同様だ。
平静を保つので精一杯。これを解消するにはセックスしかないと由那は言う。
だが千優はそういう訳にはいかない。
いくら由那の身体だろうと、知らない人相手に童貞卒業も処女喪失もしたくないのだ。初めては好きな人と、と決めている。
「本当か?」
ヒイロは千優と目が合うと赤面した。
赤くしながらも真っ直ぐ見るくるものだから、千優は昔の事を思い出した。
恋をしている瞳を。
三年前の夏休み、可愛い女の子に告白された事を──。
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