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承認欲求。
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俺の唇が、二星の唇によって塞がれる。
とある涼しい日の、誰もいない教室の。
お昼休みの、出来事だった。
「 ……二星…? 」
俺は今、怪訝な顔をしているのであろう。
同級生の彼に、突然キスをされたのだから仕方がない…よな。
「 …二星じゃない__隼人って、呼んで 」
二星が俺を、抱き締める。
「隼人」。それは二星の下の名前だった。
こいつの家は家庭環境が複雑で、生みの親からは愛されて育っていないそう。
その生みの親から付けられた名が、「隼人」__。
高校を休みがちだったのは、その生みの親が隼人を残して自殺し、 叔父と叔母に隼人を預けた時期と、高校に入学するタイミングが丸かぶりだったから…らしい。
邪険に扱われていたとはいえ、親は親だから。
隼人は当時、ひどく悲しんでいた。
「 お前、下の名前嫌いだって__ 」
「 いいの…… 」
いいのか。……俺が呼んで、許されるのだろうか。
「 …はやと… 」
静かに、名前を口にする。
「 ねぇ、清川の方が良介はすき?だよね……でも俺もね、好きなんだ…良介のこと…ごめん、ごめんね 」
俺を抱き締めたまま、隼人は子供のようにえぐえぐという声を上げた。
「 っ、隼人、落ち着け……ごめんな、俺、ずっと気付いてたんだ。隼人が俺のこと好きだって。
…隼人の家に行ってたのだって、最初はクラス委員だからって理由だった。だけど……俺も、昔…隼人のことが、好きだったんだと、思う 」
そう。
俺は最初から、隼人の気持ちに、想いに。気付いていた。
最初は「クラス委員だから仕方なく」という名目で彼の家に行っていたけど、家庭環境を彼から聞くうちに「同情」、それが「友情」、
そして少しの「愛情」に変わっていったんだと思う。
今こそ俺は清川が好きで、貴金属でなんとか誤魔化している「寂しさ」を俺がどうにかしてやりたい…って思ってこうなってしまっているけど。
「 今は清川を優先というか、しちゃってるけど… 」
「 良介……もう一度、だけ……求めちゃ_だめ? 」
隼人がこちらに上目遣いを送る。
「 ……おいで 」
俺にも、責任があるから。そう小さく、聞こえないように呟いた。
.
「 へへ…良介、キスして__おねがい 」
ぎゅっと密着していた体を離し、こちらに唇を差し出してくる。
「 ん… 」
まずは軽く、優しく舌と舌を絡ませていく。
____この教室でキスをするのは、二度目だ。
あの日、全てが始まった日。
全ての始まりの、キスをした日。
あの時清川からキスをされていなかったら。今頃なにが変わっていただろう。
清川と香坂は生徒会に入りもしなかっただろうし、隼人からこうやって想いをぶつけられることもなかったんだろうか。
その点では、清川に感謝すべ____「 良介?集中して 」
「 …わりぃ 」
隼人のワイシャツに、上から手を滑らせた時。
聞き慣れた、チャイム音。
「 ……… 」
「 …………… 」
何を言うでもなく、隼人は俺から体と唇を離し、さっさと自分のクラスへと戻って行った。
「 ……っ…… 」
なんだ、この気持ちは。
賢者タイム、とかいうやつなのだろうか。
なんだかすごくこっぱずかしくて、くすぐったかった。
ぞろぞろとクラスメイト達が教室に出入りする。
5時間目の授業は、なんだったかな。
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もうすぐ完結する予定です…。
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