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見抜いて、その気持ちを。
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「 ……キヨくん 」
「 はい 」
「 ……人、来ないね 」
1年2組。今は軽音部が体育館でステージを行っている。
…のだが。
そっちに人が集まってしまって、今はどのクラスにも人が来ていない。閑古鳥が鳴いていた。
「 清川くん、香坂くん!もう午後だから順番変わっていいよー。香坂くん呼び込みの看板貸してっ 」
出た。石橋さんだ。
「 もう、香坂くんったらそんな明らかに嫌そうな顔しないでよー。ほら、看板いいよ。清川くんも着替えて 」
俺に手を差し出してくる。
ので、看板を石橋さんに手渡した。
「 ありがとう!……最初は、ごめんね 」
石橋さんは、俺に向けて申し訳なさそうにはにかんだ笑顔を向けた。
なんだ、意外と__素直な子じゃないか?
ふと、メイドカフェのドアベルが響く。
「 あ、いらっしゃいま___ 」
キヨくんがつい癖で、いらっしゃいませを言ってしまうけど。
そこに居たのは、生徒会長と二星先輩で。
「 おう 」
「 やっほー、香坂、清川 」
お疲れ様です、と二人ともお辞儀をする。
「 おう。二人とも午後から自由だろ?清川は俺に、怜斗は二星に付いてってくれねぇか 」
なんだろう、なんの用事だろう___キヨくん何かやらかした___?___俺何もやってねぇよ____
キヨくんと目配せをする。
「 どうした?清川、来い 」
「 あ…分かりました、着替えてきますね… 」
「 そのままでいい 」
え。メイド服のままでいいのか。そんなジェスチャーをするキヨくん。
「 ほら、香坂も。来て 」
「 ……はい 」
「 生徒会のお仕事?頑張ってね 」
石橋さんの言葉を背に、言われるがまま教室から俺達は出て行った__。
.
最早誰も居なくなった廊下を、二星先輩と二人で歩く。
「 二星先輩、どこまで行__ 」
「 香坂さ 」
俺の言葉を、遮って。
「 清川のことは諦めたの? 」
何も、言えなくなる。
「 ……え? 」
「 俺は、良介…生徒会長のこと諦めたよ。良介が幸せそうに笑ってるのが好きだからさ。香坂は、どうなの? 」
「 ……なんの事だかわからないです 」
「 嘘。おそろいのネックレスを良介がいじる度に嫌そうな顔してたくせに 」
どうして、見抜かれていたのだろう。
そんな素振り、出していなかった__はず。
「 香坂は分かりやすいね。諦められてないんだ 」
ふふふと笑う二星先輩が、なんだか、今はとても鬱陶しくて。
「 やめてください。……俺だって、俺だって辛いんです…ずっと、ずっと、想ってたのに、っ、好きな人に振り向いてもらえなっ____ 」
ぐっと、俺の体を引き寄せる二星先輩。
「 大丈夫、大丈夫 」
その優しい言の葉に、涙が流れる。
「 っ………うっ、う…… 」
「 ……恋が叶わない者同士、仲良くしようぜ… 」
二星先輩が、俺にキスをする。
そうだよな。
恋が結ばれる者がいれば、結ばれない人もいて当然__それが人の、理だと。誰かが言っていた。
もう、もうどうでもいい。どうにでもなってくれ。
そう思って、俺は素直に二星先輩からのキスを受け入れた__。
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