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《和也》
引越してから、一か月…どうやらここはまだバレてはいないようだ。
凛は、薬が合って今のところ順調。
家事もそこそこやってくれている。
俺も新しい現場にも慣れた。
束の間の平和な日々。
「兄さん、おかえり。」
「ああ。」
「もうすぐ、ご飯できるから。」
俺は、黙って頷く。
凛は気にした様子もなく、夕飯の続きに取り掛かった。
「和也さん!おじゃましてまっす!」
「….ああ。」
水沢日向太。
学校の帰りに寄ったのか、鞄とスポーツバック。
友達もいるだろう。
なのに何故…幼なじみとはいえ、何を好き好んで凛と関わっているんだろう。
凛は、大袈裟ではなく友達と呼べるような奴は居ない。
無口で、基本無表情、絵ばっかり描いてる暗い奴。
日向太が何か言い、凛が笑う。
およそ珍しい。
凛が笑うなんて。
それも、声を出して。
また、二人で笑いあう。
イラッとした…。
…何笑ってんだよ。
こちとら疲れて帰ってんのに…。
「……もう遅いんじゃないか?」
低い声で言う。
「あ…すんません!!
もう帰りますから!
んじゃまたな、凛。」
「ん…気をつけて。」
ああ…
イラつく。
凛が普通にしていると、イラつく。
病気だったり、反対に笑ってたりすると、余計にイラつく。
昔からそうだった。
…凛の存在自体が、イラついてたまらない。
それなのに…何故、あんなに嫌ってた故郷に帰って来てしまった?
……決まってる。
世間体と自分の良心の苛責に耐えかねて…だ。
そうでなかったら……なんで凛となんか…。
頭を振って、考えるのを止めた。
…よそう。
言っても仕方がない事、考えるのは…。
それにしても…
ああ…イラつく…。
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