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21 (過去 和也)
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「……今、弟さんと住んでいるのか?」
沈黙をそれと受け取った大樹は、ため息を吐いた。
「おまえが、妙に真面目なのは知ってるよ?
でも!会社辞める事はないだろう?!
なんなら、おまえが一人暮らしして、弟を引き取ったらいいじゃないか?」
「ダメだ。
弟は、先天性の疾患があるのがわかって、専門医でないと見てくれない。
それに、バレたら会社に迷惑がかかる。」
「……ほんと、もの妙なとこで生真面目…。
……弟さんのことは、養護施設に任せるのが一番いい…と思うんだけどな。
イジメは許されないけど、施設代わればいいことだろ?
…それに…暮らしも楽じゃないんだろう?」
「う…。」
長い…沈黙。
破ったのは、大樹だった。
「…ま、愚痴とか言いたくなったら連絡くれ?
んで、こっちに戻る気になったらいつでも帰ってこいよ?
逃げるんじゃない。
おまえはおまえの道があると思うんだ。
それに…暮らしも楽じゃない生活送ってる弟さんも、施設の方が良いと、俺は思うがな?
その上でおまえが面会に、行ってやったら良いんじゃないのか?
…リーマンに戻るんだったら、三十までだ。
俺が口聞いてやっても良いし、大学の教授に頼んでもやるから…和也、戻って来いよ?
何の為に、大学行ったのか、わからなくなるぞ?」
「大樹…だけど…!」
「おまえは、弟さんの幸せ考えてる。それは、真っ当で尊敬できる事だ。
けどな、…俺は、顔も知らない弟さんよりおまえの方が大事なんだよ?」
大樹が、俺の肩に手を置く…。
じゃあな。また、必ず会おう、と言って、大樹は連絡先を俺に押し付けて帰って行った。
どうしようもなく、煮詰まっていたのが話すことで、軽くなるかと思ったら…全然軽くはならなかった。
むしろ…重くて…押し潰されそうだ…。
…凛の幸せ…?
そんな事、考えた事も…なかった。
ただ…俺は良心の苛責に耐えかねただけ…。
俺は人でなし…なんだろうか…?
ああ……酒が…飲みたい…。
飲んで……何もかも忘れたい。
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