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慌ただしく、身の周りの物だけ持って。
「準備は出来た?」
「…はい。」
「じゃ、行きましょう?
これで失礼しますね。」
「はい。
よろしくお願いします。」
兄さんが言った。
黙ったまま、準備する僕を見てた兄さんが、僕に向かって、やっと口を開いた。
「…また、行くから。」
言葉を喋ったら、泣きそうで、ただ頷いた。
児童相談所の人達に連れられて、車に乗った。
最後に…ちら…と見た兄さんは…なんだか、ほっとした様子で…
それが、嬉しくて…哀しい。
頭、ぐちゃぐちゃだ。
僕…。
……今まで、ありがとう…って言えないまま。
でも、言えば、それがまた兄さんを、苦しめる。
もっと兄さんと居たい、と言えば…それも兄さんを苦しめる。
どうしたら…良かった…の?
うん…。
結局…黙ったまんまの方がいいんだ。
手に持ってた、イルカのキーホルダーをきつく握り締めた……。
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