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93《直》
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《直》
二人が出て行ってから、しばらくして、
「…兄さん。」
と、凛が言った。
能面のような表情じゃない。
戸惑ったような表情…。
対する兄貴は…冷たい表情は変わらない。
凛!頑張れ!
兄貴!
なんとか言え!何とか!!
「…ごめん…なさい…。迷惑かけて…。」
兄貴が、ため息を吐く。
…ムカーッ!!
「兄貴!!ため息なんか吐く事ねーだろ?!
具合どうだとか、言ってやんねーのかよ?!
凛も凛だ。
ごめんなさいなんて、言う事ねーんだ!
話聞いてると、凛、被害者なんだろ?
だったら、ごめんなさいなんていう事ない!」
「直!!黙ってろって言ったな?!」
「これが黙っていられるかっ!!」
「…止めて。」
睨み合った俺たちを、凛の細い声が止めた。
「ごめんなさい、兄さん。
……もう、具合は、ほんとに、大丈夫だから…。」
また、兄貴がため息を吐く。
「本当に、大丈夫なんだな?」
「うん。兄さん。」
「……斎藤さんと話しをしないといけない。
……また来る。
おい、直、来るんだ。」
「ここで待ってる。
凛とも話たいし!」
「え…?」
凛、驚いてる、驚いてる。
うん、能面みてーな顔より、ずっといい。
「…勝手にしろ。
30分後、病院の出口で待ってる。」
「了解!」
敬礼で見送ると、また兄貴は、ため息を吐き、部屋を出て行った。
ドアに、アカンベーしながら、凛に声掛けた。
「ため息吐いちゃ幸せが逃げるっていうの、知らねーのかよ?
なぁ、凛?」
凛は…能面みてーな顔しようか、それとも、知らんふりしようか、戸惑ってんのがわかる。
可愛い。
あんまり同じ年の奴に、言う言葉じゃねーけど…凛、見た目がちっこいからなー。
結局、ポツンと言った。
「………変な……人…。」
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