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「何しに来たんだよ」
小糸の私服姿を初めて見て、妄想の世界に飛んでいた俺の前にいつの間にか小糸が立っていた。
「えっと」
「家に来られるのは迷惑なんだけど」
小糸の口調は明らかに怒っていた。
今までどちらかというと穏やかな小糸しか知らない俺は、戸惑い俯いた。
「ごっ、ごめん。今朝、ノート借りたままだったから、返そうと思って」
その途端頭上から舌打ちが降ってくる。俺は泣きそうになりながら、カバンを漁り、ノートを取り出すと、小糸の手に押し付けた。
「突然押しかけて本当にごめん。俺、もう行くな」
「鈴賀っ」
俺を呼ぶ小糸の声が聞こえたが、俺はそのまま彼に背を向けて走り出した。
俺を見る小糸の冷たい視線が家に帰るまで何度も思い出されて、その度に俺の胸は抉られたように痛んだ。
翌朝、習慣でいつも通りの時間に目が覚めたが、すぐにベットから起き上がることができなかった。何度も瞬きをし、寝返りをうつ。
小糸との二人きりの早朝の時間をあれだけ楽しみにしていたというのに、今日は俺の体も頭も鉛を流し込んだように重かった。
またあんな冷たい目で見られたら…。
昨日の小糸を思い出し、俺はベットにうつ伏せになって目を閉じた。
「あーーー」
小さく叫んで体を起こす。
とにかく小糸に謝ろう。多分、突然家を訪ねたのが良くなかったんだ。もう二度としないと誓い、謝り倒そう。
このまま普通に話せなくなるのは絶対に嫌だ。
そう決心すると、俺は急いで洗面所に向かった。
教室の前で、俺はドアに一度触れた手を引っ込めて、大きく息を吐いた。
キッと顔を上げると、迷いを振り切るように勢いよく扉を開けた。
小糸は席に着き、教科書に目を落としていた。
その横顔を見て、俺は少しだけほっとした。
来てくれたんだ。
どんなに謝りたくても、小糸が来なければ謝罪することだってできやしない。
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