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「……あのさ、僕、断ったよね?」
「何を?」
「君の告白」
言いにくい内容なだけに、言葉を濁したにも関わらず、瀧澤の不遜な態度に由良の短気な部分が発動し、ハッキリと確信を突く。
じろりと睨みつけながら、拒否する意思を見せる由良だが、瀧澤はそれを鼻で笑って由良の手を奪うように握りしめ、そのまま自分へと引き寄せた。
「俺、言ったよな?」
グッと顔と顔の距離を縮め、瀧澤は切れ長の黒い瞳を楽しそうに細め、もう一度、一週間前に由良へと放った言葉を繰り返した。
「お前の全てを貰う……って」
呼吸を直ぐ側に感じ、唇と唇が触れるのではないかと思うぐらいの距離感に由良の体温が上昇する。それに連動するように顔が赤く染まっていった。
握られる手も汗が滲み出し、恥ずかしさに視線を逸らすように顔を俯かせた。
ゆっくりと逃げるように瀧澤の手から自分の手を引き、ヴァイオリンを抱きしめる。
否応無しにドキドキする自分の心臓音が耳に響き、それが嫌で由良は小さく深呼吸すると、頭の中で今日弾いたスプリングソナタの楽譜を並べた。
音楽の事を考えると落ち着く。
天職と信じてやまない自分の取り柄。
誰にも負けない。負けたくない。
己の価値を見出す音楽だからこそ神経を集中させることができるのだ。
逸る鼓動を徐々に戻しながら、由良は瀧澤を真っ直ぐ見た。
「僕、愛だの恋だの、そういった事、大嫌いなんだ」
揺らぐことのない亜麻色の真摯な瞳に瀧澤は表情を変えない。
自分の告白を全否定され、全身で拒否する由良をそのまま見つめる。
「何かトラウマでもあんの?」
毅然とする由良にそんなものは微塵も感じない。
感じないはずなのに……
「……一人は寂しいんだろ?」
亜麻色の真っ直ぐな瞳の奥底が哀しみと恐怖に濡れているようで瀧澤は思いのままを口にした。
だが、どうやらそれがいけなかったようだ。
「……っ、うるさいっ!そんなものないし、一人の方がいい‼︎」
いきなり癇癪を起こしたかのように大きな声で怒鳴りつけ、由良は拳を振り上げた。
その手が瀧澤に振り下ろされる瞬間、我に戻ったかのように寸で由良は拳を止めると、相手を憎々しという目で睨みつけ、吐き捨てるように言葉を放った。
「お前みたいな脳内花畑状態のバカはタイプじゃない」
ちょうど、赤信号で車が停車し、由良はロックを外すと、瀧澤を一瞥し、車から降りていった。
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