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side 瀧澤
由良が過ぎ去った後も瀧澤は人気のない階段下から動く事が出来なかった。
『初めてじゃないっ!』
『変な妄想で自分の理想を僕に押し付けるな』
由良の言葉が耳から離れなかった。
少し長めの亜麻色の髪と瞳。少し低い鼻にふっくらとした唇の女顔でおっとりとした顔がどストライクだった。
2年に進級し、同じクラスになって初めて由良を知ったが、毎日目を奪われた。
あまり喜怒哀楽を示さない由良がたまに笑う姿に鼓動が乱され、自分の恋心に気が付いた。
ヴァイオリンを奏でる姿はとても凛として美しく、その音色にも恋をした。
恥ずかしがり屋で努力家。健気で憂いを帯びた儚げな男だと思っていた。
だけど、実際話をすると気が強く、強情で芯が強くて驚いた。
知れば知るほど、由良という存在に溺れていきそうな自分が嬉しかった。
そんな自分の逸る気持ちに心が高揚して、由良へと告白をした。
まさか振られるとは思わなかったが……。
男にも女にも相手に不自由した事はなかったし、自分が声をかけて落ちなかった相手は今まで一人としていなかった。
だから、由良に振られた時も相当驚いた。というか、振られたと思っていなかった。
ただの照れ隠しだと思っていたのだ。
本気で拒絶された今となれば、かなりイタイ奴なのだが、それでも落とせる自信はあった。
あったのだが……
由良の言葉で瀧澤は全てが分からなくなった。
由良が言う通り、俺は俺の中の由良を思い描き、それが現実だと信じていたから。
恋愛面では全てにおいて真っさらだと思い込んでいた。
それがお手つきだと知って勝手にガッカリして、勝手に幻滅している自分がいる。
自分勝手過ぎると俺自身思うのだが、こればかりはどうしようもない。
そう思ってしまったのだから。
かといって、由良を諦めるとなると違う気もして……
瀧澤は自分の気持ちがぐちゃぐちゃになってしまい、壁をバンっと掌で叩いた。
「あーーー、くそっ!なんだこれ。すっげぇ、胸くそ悪りぃ」
モヤモヤの正体が分からず、一人で悪態吐くと、瀧澤は授業をサボることにし、教室へ向かう為の階段に背を向けた。
side 瀧澤 終わり
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