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距離 18
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イカリさんが仕事に行くと言って家を出てから、一体何時間玄関で立ちすくんでいたのだろう。
壁に飾られた時計に目をやる。
時計の読み方だってイカリさんに教えてもらった。
もう少しで日にちが変わってしまう。
ごはん、食べないと。
イカリさんの忠告を思い出して、開かない扉に背を向けた。
冷蔵庫の中には、俺の食べる量に合わせたのか少しずつ小分けにされたおかずが敷き詰められていた。
何日分あるのかな。
このおかずの数だけイカリさんが帰ってこない気がしてしまって、やっぱり玄関の前で待っていたいと思う。
本当に帰ってくるかな。
イカリさんは「しばらくは帰れない」とは言っていたけど「帰ってくる」とは、ひと言も言っていなかった。
ぎゅっと胸が痛む。
その時ピーピーと音が鳴ってビクッと肩が跳ねた。
怖くて冷蔵庫から数歩離れた。
しばらくしたら音は止まって、恐る恐る近づく。
ご飯食べろって怒ってる………。
1番手前にあったのを取り出して、いつもイカリさんがしているのを思い出しながら色んな引き出しを開けて俺用のフォークを見つける。
イカリさんの家に来てから、ひとりでご飯を食べるのは初めてで、少し違和感。
イカリさんに言われたのは、ご飯を食べる事と眠ること。
いつも食べ終わったあとにお皿やグラスをイカリさんがしているように水で綺麗にするのかな。
迷ったけど、やり方が分からなかったからお皿とフォークをシンクに置くだけにした。
いつも食器をシンクに持っていくと、イカリさんは「ありがとな」と言う。
なんとなく自分の横を見上げてみてもイカリさんはいなくて、シンとした空間に寂しさを感じた。
ご飯は食べた。あとは、寝る。
寝室に歩いてベットに横になった。
ベットの半分を空けて寝転がり、その空いたスペースで眠る人はいないことに気づく。
すっかり俺の生活の中にイカリさんが横にいることに体が慣れてしまっている。
1人では広すぎるベットも、1人で食べる冷たいご飯も。
何をしていてもイカリさんを思い出す。
”怖い夢見たら起こしてやるよ”
”ほら来い、包帯巻き直すから”
”かわいい”
”お前はどうしたいんだ”
”シロ”
…………………声が聞きたい。
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