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君、還る場所 43
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翌日、蒼大は黒縁眼鏡を掛けたヨウ君に見送られて家を出る。
どうやら、ヨウ君は眼鏡を気に入ったようだ。
太いフレームが頬の傷をちょうど隠して、目立たなくなったし…よかった。
今日は母さんが居るし、寂しくはないだろう。
蒼大は商店街へと向った。
学校はサボりだ。
なぜなら、ヨウ君の着物を早くクリーニングに出したかったから…。
1日も早く森へ還してあげなきゃ……。
本当は、好きだから一緒に居たい。
でも、それは我侭だ。
一緒に居たいけど…本当に大切ならば、これ以上純粋なヨウ君を人間の世界に留めてはいけない。
また、心無い人に傷付けられる事があるかも知れない。
だから、還る事がヨウ君の幸せなのだ…。
それに、これ以上側に居たら、還してあげなくてはならなくなった時、蒼大自身が離れられなくなりそうで怖かった。
だから、出来るだけ早いうちにヨウ君を還さなければ…。
「……ごめんなさいね」
「えっ?」
呉服屋の女将さんが紙袋から取り出したヨウ君の着物を広げて言った。
「これは、お品はとても素晴らしい物ですわね。ただ、ここまで汚れがひどく染み込んでしまっては、どんなに頑張っても綺麗にはして差し上げれないわ…。ごめんなさいね。本当に、残念だわ……」
そうまで言われてしまったら、諦めるしかないだろう…。
肩を落とし、お店を出ようとして、出入り口付近の商品棚に目が止まった。
棚の上にディスプレイされた、紳士物で格子柄のベージュの着物に、目が釘付けになった。
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