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君、還る場所 54
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「もぅ、無理なんだよっ! 付き合ってなんからんない!!」
真っ直ぐと視線を重ね、ゆっくりと言葉を発する。
「所詮、俺たちが一緒に生きるなんて無理だ。 人間は"もののけ"なんかと生きていけない!」
ヨウ君の丸い瞳……。
もぅ、蒼大は直視することが出来ず、視線を逸らす。
「俺は、お前なんかと一緒に居たくない!」
嘘だよ。ずっと一緒に居たい。
「もぅ、我慢できない!もののけなんて気持ち悪いんだよ!」
……そんな事、思ってないよ。
「だから、明日になったらさっさと還れっ!」
なんて酷い……。
ごめん。ごめんね、ヨウ君…。
でも、これでいいんだ。
人間なんて嫌いになって、もぅ二度と近づこうなんて思わなくなればいい。
そうすれば、もぅ人間に傷つけられることはなくなる。
野山で、平和に穏やかに永く生きていけばいい。
蒼大のことなど記憶から消し去って、人間のひと括りとして憎い存在になればいい。
それが、ヨウ君を人間から遠ざけ、守ることになるのならば……喜んで憎まれ役を買って出る。
頬を熱い雫が伝う。
それが涙だと気が付かれないように、頭を振って髪の毛の雫を落とした。
「ちゃんと…体も頭も洗いなよ」
そう言って背を向ける。
ヨウ君を風呂に置き去りに、さっさと脱衣所へ上がり体を拭いてスウェットに着替えた。
布団を敷き、掛布団を頭からすっぽり被り、いつもヨウ君が寝ている壁際に背を向けた。
しばらくして、風呂から出てきたヨウ君が布団の上に座り込む気配を背中に感じながら、蒼大はきつく目を閉じる。
明日になったら、何もなかったような顔をして、いつもの様に朝ご飯を食べて学校に行くその足で、地蔵さんの所へ行こう。
最近、お供えもほとんどしなくなっていた。
明日は何か持って行って、ヨウ君が無事に還れるようにお願いしよう。
もしかしたら……ヨウ君と出会えたのは地蔵さんのお蔭げなのかもしれない。
お礼をして…しばらくはあの道を通るのをやめよう……。
通る度に、ヨウ君の事を思い出してつらくなりそうだから…。
そんな事を考えながら、いつの間にか蒼大は眠りに落ちた。
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