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君、還る場所 66
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不思議と蒼大は穏やかな気持ちで、必死な形相のヨウ君に微笑み返す。
「…変なの。考えてみると、俺より周りの人の方が俺の事を大切に思ってくれているみたいだ……」
雨女の声が冷たく問う。
「……そなたが我が命より大切なものとは何だ?」
…命より大切なもの?
「対価には僕を…!雨女は僕を連れていけばいい!!」
蒼大が答える間もなく、ヨウ君が喚いた。
「ちょっ…!ちょっ、ヨウ君!ちょっと待ってよ!」
「今、蒼ちゃんが言ったじゃないか!自分の命より、僕の命の方が『失いたくない大切なもの』だって!だったら…」
蒼大のなだめる声など耳に届かない。
必死に食って掛かるヨウ君を、雨女がガラス玉のような瞳で一瞥した。
「言ったであろう…契約は、坊とではない。坊は、そこの人間の持ち物ではない」
その発言にヨウ君が目を見開く。
「持ち物?じゃぁ、何であの時は……!?」
……あの時?
「主人の命は坊が握っていたではないか…」
「僕が…?」
「あの屋敷の主人は、坊の妖力が無ければ生きてはいけなかった。ゆえに、主人の命は坊の持ち物だった。…あの時、『一番大切だった坊の持ち物』だ」
「…僕の『持ち物』……」
屋敷の主の命は、ヨウ君の持ち物として、火事を消すために雨を降らせた対価として、奪われたということだ。
「じゃぁ…やっぱり…僕が……殺した…んだ?」
ヨウ君は呟き、俯いて黙ってしまった。
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