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君、還る場所 69
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「坊は他に何も持っておらぬからな。そなたは、坊の天命を知っているか…?」
「ヨウ君の……天命…?」
そもそも、妖怪に寿命なんてあるのか!?
「坊は、妖族にして妖怪に非ず…人に同調し、人に焦がれ、人に非ず……。そういう者を、何と呼ぶ?」
「えっ…?」
妖怪でもなく…人間でもなく……。
「そ奴は、"化け物"ぞ。坊は、我ら妖族としては最早生きては行けぬ…。妖力が弱く、年月とともに見目は老いるが、精神は朽ちることはない…。化け物として永遠に存在するのがよいか、天命を捧ぐのがよいか……我には解らぬが…」
化け物として永遠に……。
一人で…?
いつまでも終わることのない命。
……それはあまりにも、寂しく、悲しい。
でもそれは、今までヨウ君が歩んで来た道で…きっと、これからはもっと孤独で…過酷だ。
容姿が老い、見た目が紛れもない"化け物"と化した時…、人は恐れ、怯え、今以上にヨウ君へ危害を加えるだろう。
これ以上、傷付けられてしまうのならば……。
いっそ…。
「……雨女さんに天命を捧げるって事は、ヨウ君は消えるの? それって『死ぬ』ってこと?」
また…。
また、大切な人を失ってしまうのか…?
何も出来ず、後悔と悲しみを抱えて生きるのか?
……嫌だ!
そんなの、絶対嫌だ!!
でも……。
だからと言ってヨウ君を孤独にはさせたくない。
蒼大は屈み、足元に跪くヨウ君と目線を合わせる。
涙に濡れた瞳に、蒼大が揺らいで映っていた。
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