アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
君、還る場所 87
-
手を引かれ、蒼大が小走りで付いて行く形になる。
ヨウ君は至って普通に歩いているのだけれど、身長が高いだけに、悲しいかなコンパスにも差がある。
けれど速度を落としてもらうのも癪なので、なに食わぬ顔で必死に付いて行った。
お宮脇のお地蔵様に差し掛かった道で、ヨウ君の足が止まった。
無言で蒼大の手を解く。
「ヨウ君…?」
お地蔵様の前まで進むと、ヨウ君は掌を合わせ目を閉じた。
蒼大は慌ててポケットの中をまさぐる。
「あった!」
制服のポケットの中から、あめ玉を取り出しお地蔵様に供えると、ヨウ君の横に立った。
ただじっと立つ蒼大に、ヨウ君が不思議そうな視線を向ける。
「なに?」
「お願いしないの?」
「……ヨウ君がしてるじゃん」
「えっ?」
目を丸くして、首を傾げる。
「お供え物が1個しか無いのに、欲張っていっぱいお願いしてヨウ君の願い事が叶わなかったら困るだろ」
実際は、そんなことはないのだろうけれど…。
どうせまた、バイト帰りに通る道だ。
今回はヨウ君に譲る。
「…蒼ちゃんは本当に優しいね」
面と向かってそう言われると、無性に恥ずかしくなって顔を背けた。
「なに、お願いしたのさ?」
わざとつっけんどんに訊いた。
ヨウ君はそんな蒼大の態度を全然気にする様子もなく笑う。
「蒼ちゃんと、早く本当の家族になれますように。って!」
「えっ?」
”家族”?
それって………。
心の何処かで思わなかった訳じゃないけど……でも、「まさか」と思っていた。
もしかして、母さんと再婚!?
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
87 / 90