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渡辺くんの願望。
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***
艮くんは所謂ヤンキーです。
「こっちジロジロ見ンな。頭カチ割るぞ」
赤色の髪の毛がくるくるで、尖った八重歯がチラ見えしてて、目つきもなかなかに鋭い艮くんは、地元のヤンキーから畏敬の眼差しを向けられる事も少なくなく、ゆえに朝から喧嘩が絶えません。しかも残念なことにそこそこ強いのです。
「だから、こっち見ンな」
艮くんは一匹狼です。誰かと徒党を組む事もなければ、屋上で一緒にお昼を過ごす人も居ません。
「…おい、聞いてンのか」
そんな艮くんが陣取る屋上はいつもガラガラ。人っこひとり見当たりません。しかし裏を返せばそれは、艮くんに会いたけりゃ屋上に行けということなのです。だから僕は今日、
結着を、つける。
「艮くん」
「あ?」
「君が」
「君が?」
「君が欲しい」
「………あ…?」
艮くんが見たこともない形相で僕を見上げた。眉間に縦皺が入りすぎててこめかみに血管が浮き出てる。
「だからね、君が欲しいんだ」
聞こえてないのかと僕がもう一度丁寧に繰り返すと艮くんの眉間は益々大変なことになって目がドーンと据わった。声も何だか地を這うほど低い。
「…何処の奴らだ」
「え?」
「何処の差金かって訊いてんだよ」
機嫌の悪くなった艮くんは持ってた焼きそばパンと牛乳を置いて拳をパキパキと鳴らす。突如の臨戦体制に僕は数回瞬きをし、かぶりを振った。
「違う違う。僕が君を、」
「誰かと徒党を組むつもりはねえ!」
「喧嘩じゃないよ」
完全にヤンキーグループの引き抜きだと思っている。まあ常日頃からそうゆう引き抜きには遭うのだろうけど、まさかヤンキーと間違われるとは思わなかった。どっちかと言えば対照的な外見だと思うんだけど。
「君が欲しいんだよ」
「意味がわかんねえ」
「えっと…艮くんの血が欲しいとゆうか…」
「血が見てえのか」
「うん。…ん?」
「…喧嘩だな?」
「違う違う!そうゆう意味じゃなくて…、」
ダメだ。全然伝わってない。むしろ理解しろとゆうほうが無理なのか。仕方なく僕は有りのままの気持ちを言葉にしてみた。
「艮くんをね…食べたいんだ」
「?」
「艮くんを食べたい」
今度こそ艮くんは考えることを放棄したようなポカンとした顔で僕を見上げた。普段とかけ離れた酷くあどけない顔にドキリとする。やばいその顔は反則。
「………殺してえて事…か?」
「えっ…。あ、でも近い…?」
「なにィ!?」
「ご…ごめんなさい!でも血が騒いで」
「じょ、常習犯だと…」
「違う!艮くんだけだよ!」
「!?」
艮くんが目を見開いて後ずさりをした。ガシャンとフェンスが音を立てる。後がない。文字通り袋の鼠だ。いや鼠じゃない。
「艮くん…、」
フェンスを掴むゴツゴツした手を取り、ぴちゃりと舌を這わす。掌をなぞって指と指の間までくまなく舐め回して咥える。
「…ッ、」
「は…ぁ、艮くん…、」
固い。でも甘い。丹念に舐めてふやかしてぐちゃぐちゃにして、
「イ…、ッ、」
赤くなった君に、
「いってええええええ!!!」
刃を突き刺したい。
「な…何すんだ、てめえ…!」
「あ!ご、ごめんつい…」
「ついって…てめえ今、か、か、噛ん…、」
「…噛んじゃった」
艮くんは信じられないものを見る目で掌の歯型を見て僕を見た。鬱血してるところから血の匂いが微かにする。あー、やばい。理性理性。
でもね、艮くんだってイケナイんだよ。そんな甘い匂いを撒き散らして無防備すぎる。いまの君は袋の鼠じゃなくて、袋の、
「鬼」
「…は?」
「たぶん艮くんは鬼だ」
「…なん…だって……?」
「鬼の血を引いてるよ。僕の血がそう言ってる」
歯型をつけちゃった掌をもう一度丹念に舐めて食んだ。
「僕は鬼退治を生業としてる渡辺家の末裔」
騒ぐ血を抑えて甘噛みを繰り返す。徐々に滲む血。あー、もうダメだ。
「退治したい。君を丸ごと」
そのために今日は来たんだ。
ガブリと噛み付いて、艮くんの悲鳴が、した。
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