アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
雨の降る日◇03
-
「お待たせして申し訳ない。お客様が来ているのに、電話などしてしまい」
白い庄司の引き戸を静かに開け、男は帰ってきた。
「いいえ、気にしないでください」
「何か言おうとしていたみたいだけど、なにかな」
「大したことじゃないんで」
男は微笑んだまま小首を傾げ、何でも聞いていいからね、と優しい声で呟いた。
「はい……。雨も止んだし、もう帰ります」
最後の一口を豪快に頬張り、コップの中のものを飲み干した。
窓ガラスに付いた水滴はゆっくりと流れ落ち、大きな音を立てるのをいつの間にか止めていた。
「早めに止んでよかったね」
「はい、ありがとうございました。カレー、美味しかったです」
「うん。またおいで」
俺は何も返さないで、首だけでお辞儀をして門の外へ出た。
俺と彼がはじめて出会った、あの門の下。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
3 / 54