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雨が止んだなら◇09
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小さな液晶画面が四時六分を表示する。
本当に鉢合わせしてしまったらどうしようと身を屈めながらも、目では男の姿を探していた。
「なあ、クワハラさんってどんな人?普段着てる服装とかさ」
「なんか……服とかは地味な感じ。でも長身ですらっとしてて、腕とか細長くて、格好いいんだよ」
なんだか惚気ているようで恥ずかしくなって、俯いて下唇を噛んだ。
「それって本当に美人なの?」
「美人だよ!落ち着いてて大人の魅力があって、すごい色気のある人だよ!」
真守の疑った声色に思わず強く反論すると、彼は「はいはい」とおかしそうに笑った。
それにしてもいくら見渡しても見つからない。ここは一階に食品売り場、二階には百円ショップがあるので、食品を求める主婦以外に若い客も多い。特定の誰かを探すなんて難しいものだった。
「真守、もういいよ。これじゃあ切りが無いからもう出よう」
振り向き真守を見ようとした瞬間だった。商品ケースを挟んだ前方から、懐かしい面影を見つける。
こんなにも暑い夏なのに薄手の七分袖シャツを着て、細く不健康な左手が買い物カゴを持っている。瞬きをするたび揺れるまつ毛。薄い唇。綺麗な首筋。ーー間違いなく、桑原さんだった。
「ッ……」
「仕方ないかあ。諦める……って、どうした?」
「い、た」
「えっ、うそ!どこどこ?どの人?!」
「馬鹿、声が大きいっ……お、俺、もう行く」
気付かれたらどうしよう。
何も悪いことはしていないのに、どうしたらいいのか分からずに逃げ出した。
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