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「だから俺たち、チェスタートン家は村の人たちに嫌煙される。俺たち家族に関わると、“彼ら”の目が自分たちに向くかもしれないって思ってる人は少なくないからね…どう、納得した?」
真っ白になったリオの頬を撫で、ニコッと笑ったロイドに、リオは苦しそうに眉を寄せた。
様々な感情が胸の中を渦巻く中、不安や疑問をぐっと飲み込み、ぽつりぽつりと選んだ言葉を呟き始める。
「いつ…その“彼ら”が…村を襲ってくるか…わからないから…」
「そう。だから俺は、ここを離れられない。ここで“彼ら”の動きを観察して、“彼ら”という生き物について学び、万が一に備えて、祖父や父が残していってくれた戦術を頭に叩き込んでいる」
「ダンは…知っていたんですね…」
「そうだね、大体のことは。だけどあいつは跡取りではないから、“彼ら”についての知識は一般の村人とそう変わらないと思うけど」
「そう…なんだ…」
ぽつりと呟き、寂しげに俯く。
そんなリオに、ロイドがそっと顔を寄せた。こつん、と額と額の触れあう感覚に、リオは視線を上げる。
うっすらと涙の浮かんだ瞳は、金色に揺れていた。
「リオちゃん…俺はね、ダンが可愛くないわけでも、リオちゃんに意地悪してるわけでもないんだよ。わかってくれるよね」
それでも、ロイドはリオの瞳を真っ直ぐに見つめ、優しい笑みを浮かべる。
耳の奥を震わせる低音に、リオは身震いしつつ、コクンと頷いた。
「いい子だね、リオちゃん」
ロイドがリオの頬を撫で、離れていく。
リオは無意識に口を開き、追おうとしたが、それに気付く前に、手の中でころんと転がった小瓶の存在に意識が行った。
リオは苦い表情を浮かべ、瓶を握り締める。
「届けに行くのは、夜になってからでもいいよ。人目に着きたくないなら、森を抜けて、家の裏側へ回るといい。森側の二階の左側の部屋、そこは昔俺の部屋だったんだ。窓枠を軽く持ち上げると、鍵が外れるようになってるからね。そこから入って、廊下に出て正面が、ダンの部屋だから」
ロイドの言葉を頭の中で反芻させながら、リオは無言のまま頷いた。
これを、届けたら…そのまま村を出て、どこか遠い、人の居ない土地で、一人きりで暮らす…。
そんなことが…本当にできるの…?
「リオちゃん」
名前を呼ばれ、リオはぴくっと顔を上げた。
ロイドが、変わらない優しい笑みを浮かべ、リオを見つめ返す。
「ジュース、あったかくなっちゃってるよ?」
「あ…っ…は…はい…っ」
ずっと握りっぱなしだったグラスの存在に気付き、リオははっとして覗き込んだ。
赤い水の表面に、今にも泣き出しそうな自分の表情が映る。
リオは不安に満ちた自分自身をかき消すように、一気にぬるくなったジュースを流し込んだ。
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The next episode → DICK
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