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雨に打たれながら空を仰ぐ。
ズブ濡れになりながら激しくなった川の濁流音に耳を傾けた。
自由になりたい。
だから翼が欲しい。
どれだけ暗雲漂うとも、その空は限りなく広く続いている。
自由になりたい。
だから水になりたい。
どれだけ汚く濁ろうとも、流れつく先の海もまた、限りなく広く繋がっている。
自由になりたい。
俺は大人の玩具じゃない。
あんた達を満足させる為に生きてるわけじゃない。
もう解放して欲しい。
どれだけ頑張っても、俺はもうあんた達を満足させる事はできないから。
家から飛び出して一人さまよった。
二度と戻らないと固く決意しながらあてもなく歩き続けた。
お金も何も持たずに出てきたもんだから、お腹が鳴っても無視するしかなかった。
雨に打たれながら空を仰ぐ。
これからどうしようと途方に暮れて、視線を足元に落とした時だった。
一瞬辺りが眩い光に包まれて、耳をつんざくような爆音が俺の真横を過ぎていく。
派手なそのバイクにふさわしい赤髪を惜し気もなく濡らし、乗っていたその男はバイクを止めて俺を振り返った。
「迷子かお前」
突然の問いかけにうまく言葉が出てこない。
迷子かと言われればそうじゃないし、けど、人生の迷い子という意味ではあっていた。
何も返事が出来ないまま押し黙る俺に、相手は乗れと一言だけ吐き捨てた。
これからどうすればと途方に暮れていた俺は、迷いながらも少しずつ歩を進める。
耳を塞ぎたくなるような音を目の前に、戸惑いながらも男の服に手をかけた。
「落ちんなよ」
後ろに跨った瞬間更に激しい爆音が鳴り響く。
これからどうなるんだろう。
知らない人に簡単に着いて行って、不安はないのかと言ったら嘘になる。
だけど一人ではこの街で生きてはいけない。
それなら、と俺は思ったんだ。
土砂降りの雨の中、俺はこうして宍戸真崎に出会った。
晴れわたる空。
冷たい風が強く荒れるように吹き抜けて行く。
金に染めた髪を揺らしながら、俺は玄関から足を踏み出した。
後ろでは母親が不安そうに俺を見つめている。
言いたい事は山ほどあるんだろうが、それを口にする事はできない。
煩くわめけば、また俺が家を出て行くかも知れないと脅えているからだ。
父親も然り。
あんなに煩かったあの親父が、低レベルな荒れた高校に進学すると言っても何も口を挟まなかった。
好きにしたらいい。
ただ一言そう言っただけで。
自由を手に入れた。
これからは好きに生きて行ける。
どれもこれも全て、真崎のおかげだった。
中二の頃、家を飛び出して途方に暮れていた俺を拾ってくれた。
しばらく居ていいと、デカイマンションの部屋の合鍵も渡してくれた。
みずしらずのガキに何て不用心なと思ったが、そん時は素直にそれが嬉しく思った。
ありがとうと小さく呟く俺に、いつか恩返ししてもらうからと、優しく笑って頭を撫でてくれた時のあの気持ちは今でも忘れずに残っている。
名前だけで後は何も知らない真崎という男に、その自由な生き方に、俺は心底憧れていた。
親に見付けられ、真崎にきちんと別れも言えないまま離れ離れになって約二年。
俺は高校に進学し、荒れたその空気の中で自由を満喫していた。
校則なんてあってないようなもん。
学校も俺達荒くれ者を見てみぬふりで、煩く言われた事なんか一度もなかった。
だからこの学校を選んだ。
縛られたくなかったから。
「弥恵、最近お前目立ち過ぎじゃね」
「は、何で」
「二年の先輩、お前に目ぇつけてるって。気をつけろよ」
「知るか」
珍しく朝から登校するもいつものように屋上でサボリ。
後からきたダチの南にそんな事を言われてうんざりした。
目立ち過ぎって何だよ。
確かにこの前二年の先輩ボコってやったけどそれの事言ってんのか。
悪いけど喧嘩売ってきたのはアッチなんで。
俺はただ廊下歩いてただけだっつーのに、ガンくれただのなんだの。
うぜぇ…。
「お前も喧嘩強いのは認めるけど、さすがに大勢だったらヤバイだろ?」
「何とかするからいー」
「何とかってお前、刃物はやめてね」
「時と場合によるだろ。殺されかけたら刺す」
ポケットに常に忍ばせてある小型のナイフ。
それを取り出して南に突きつけてやった。
「うおっ、あっぶねーなテメーは!!」
焦る顔に爆笑した。
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