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入院
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おっさんが入院した。
仕事中に緊急の電話を受けたとき、取り乱しかけたが生死にかかわらないと聞いてほっとした。
もし死んでたら涙くらいは流すのかなーとか思ってみる。うん泣く俺、おっさん好きだもん。
入院先は救急隊員の人に聞いていたので次の日とりあえず身の回りのものと定番の果物の詰め合わせを持って病院に向かった。本当は入院したその日にすっ飛んで行きたかったけどほら、仕事があるしね。
受付の綺麗な看護師さんに聞くところによると、おっさんは豪華一人部屋だそうだ。
金の無駄遣いである。安月給の癖に
部屋の扉の横に書いてある名前を確認してスライド式の扉を開くと、痛々しく包帯が巻かれて横になるおっさんがいた。
「おう、よく来たな」
手をひらひらふりながら笑顔をヘラリと見せたおっさんに安心したのか俺の瞳からしょっぱいものが流れてきた。
生きている。これだけで嬉しくて仕方なかった。それとともに思った以上に元気だったことに腹が立った。
涙をぬぐいもしないままベッド横の丸椅子に座り、とりあえず痛そうな部分を軽く叩く。
案の定おっさんは痛そうにのたうっていた。
「お前けが人になんてことすんだコラ」
「うっせ。自業自得じゃ」
涙を拭っておっさんと向き合う。まだ痛そうにしているおっさんを見つめていると目があったあと
「俺はそうそう死なねーよ」
心の中の負の感情がその一言で消えた。
グレーなことをしている公務員なのは知っていた。
時々夜帰ってこない事に不安を感じることもあった。
でも今、おっさんは俺の目の前にいて笑ってくれる。それだけで心が満たされた。
言われた言葉が暖かかった。
「りんごはうさちゃんな」
「40のおっさんが?」
「うっせ。それより受付のナース可愛くなかったか?」
「浮気するならご自由に。」
「わり、嘘だってマジで。呪いの文字を掘られたうさちゃんとか可愛くないから。ごめんって。」
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