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水族館も一通り見終わって、僕達は帰ることにした。
翼冴と一緒にいるのは楽しくて、少し心が軽くなった気がした。
水族館を出れば外はもう夕方で、辺り一面が橙色に染まっている。
最寄り駅に着いて、家の方向へ歩き出す。
そして、分かれ道で手を掴まれた。
「どうしたの?」
「あのさ…俺、今日ずっと考えてたんだけど…」
「うん?な「お試しで付き合えない?」
何を考えていたのだと問いかけようとしたら、被さって提案された。
「え?お試し…?」
「そう。俺のこともっと知って欲しい。それから答えを出して欲しい。だって、今のままだったら、俺振られるんだろ?でも、慧都は俺のこと全然知らないと思う。だから…」
なんて誠実なんだろう。
僕とは大違いだ。
好きだけど、でも手には入らないから、閉じ込めようだなんてそんなこと、微塵も考えていないんだろう。
僕の愛とは違って、歪んでなくて、まっすぐで。
きっと、翼冴と付き合える人は、幸せなんだろう。
でも壱椰を忘れるために利用するなんてそんなこと…していいの?
「僕さ、失恋したんだよ。それでも、まだその人が好きなんだ。忘れさせてくれる?」
「失恋?慧都が?」
「うん。僕が今他の人を好きでもいい?」
「あぁ、今は。俺が忘れさせてやる」
「…お試しね」
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