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6 (R15)
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これは対価だ、ってツグト君は言った。自分を地下から呼び出し、そしてまた都合のいいように使おうとする対価だと思え、って。
「対、価……?」
腕を強く掴まれ、訳も分かんないまま繰り返すと、「ああ」って皮肉気にうなずかれる。彼の唇はまた自嘲するように歪んでて、それを間近で見せられて、ドキッとした。
そんな風に笑って欲しくない。きっとツグト君には――救国の英雄たる勇者様には、もっと晴れ晴れとした快活な笑顔が似合うハズ。
なのになんで、彼はこんな辛そうなんだろう?
いつの間にか、部屋には誰もいなくなってた。
侍従は侍従の控室に行って、近衛兵は部屋の外に出たのかも。つまり、助けはなくて、「いけません」とか止める者もなくて、オレはそのまま隣の寝室に連れられた。
明るい午後の光の中、自分のベッドを見せられてあわあわと慌てる。
そういえば、彼が寝る部屋はどこになるんだろう? 客間は用意されてないのか? けど、それを誰かに確かめることもできない。今この状況で、思い出しても仕方ない。
さっきの会話の流れで、何を求められてるのか分かんない程、子供でもなかった。
ただ、残念ながら知識もない。
オレにとって不必要な知識は、誰からも与えられてない。深くキスをされ、口の中に舌を捻じ込まれて、それだけでもう翻弄される。
「ん、あ……」
口から漏れる声も上ずってて、余裕がないの丸分かりだ。でもそれを笑われることはなくて、ちょっとだけホッとした。
「お前が欲しい」
首を片手で掴まれ、こそりと囁かれて、ぽうっと目の前の彼を見上げる。
「オレを『勇者』と知っても怖がらねぇ、今のままのお前が欲しい」
囁きは甘いのにその笑みは苦くて、じわっと胸が痛む。
ツグト君を怖がらないって、どういう意味なのかよく分かんない。敵でもないのに、怖がる必要ないよね? それとも昔、彼は怖がられてたんだろうか? それが、彼が気にする彼の評判?
そう思ったと同時に、鎖骨の下あたりがまたヒリッとした。そこに何があるのか分かったのは、ツグト君に服を脱がされてからだ。
オレのなまっちろい胸元には、いつの間にか鎖に囲まれた錠前のような文様が刻まれてて。そこに指を這わされると、やけどしたみたいに熱を帯びて痛んだ。
「これ、多分一生消えねーぞ」
くくっと笑われ、その文様にキスされて、「うあっ」とうめく。
「こ、れ……」
「これは『鍵』の証だ。お前はオレを繋ぎ止める『鍵』。臣籍に下るって? それは国が許さねーんじゃねーの?」
服を更に脱がされながら囁かれ、ぶんぶんと首を振る。けど、何を言えばいいのか分かんない。
オレが『鍵』なのは分かってる。でも、それは解放するための『鍵』じゃないのか? 繋ぎ止めるって、どこに? 国に? それとも、この世界にだろうか?
オレを裸にした後、ツグト君も服を脱いだ。その裸の肌には無数の傷跡があって、ハッとする。
「うわ、傷が……!」
1番ヒドイのは、脇腹の大きな傷跡だろうか。胸にも背中にも、腕や太ももにも傷はあって、かつてヒドイ戦いをしたんだと分かった。
特に脇腹のは、これ、致命傷なんじゃないのか?
「えっ、これ、大丈夫なの?」
おろおろと訊くと、ツグト君は「んあ?」って自分の体を見下ろして、それからまたふっと、自嘲するように苦く笑った。
「ああ、古傷だ。もうとうに痛まねーよ」
そう言いながらオレをベッドに押し倒し、その上に覆いかぶさって来る。
真っ昼間の寝室で、互いに裸で。そして、こんな体勢で。再びキスされて、カーッとならないハズがない。
「今はもう、傷も付かねぇ」
そんな囁きが耳に落とされたけど、その意味を問うだけの余裕もなかった。
今から何をするのか、ホントにそれをするのか、尋ねたい気持ちがいっぱいだったけど、言葉にならない。唇さえキスで封じられて、恥ずかしさに目を閉じる。
彼の手首や足首に、あの枷の痕がないことを、不思議に思うこともなかった。
「お前はキレーだな」
ちゅっと胸元の文様にキスを落とされ、「ああっ」とうめく。
ツグト君の大きな手のひらが、肩に胸にと這わされて、それがすごく気持ちイイ。温かな手のひらは彼が生きてる証だと、何となく思った。
おとぎ話の人じゃない。伝説の中の人でもない。彼は生きて、今オレの前にいて、情欲の滲んだ目でオレの体を見下ろしてる。
「ツグト……っ」
オレの声はひどく上ずってて、みっともないなぁと思った。
ただの対価として求められてるだけなのに、カーッと顔に熱がこもり、全身がむずむずと熱くなる。
「名木沢嗣人、だ。言ってみろ」
自分の名を告げる彼の声も、さっきより甘い。
その笑みはやっぱり苦く歪んだままなのかも知れないけど、今は見たくなくて、目を閉じる。
「ナギ、シャーワ、ツ、グト」
「ああ」
「ナギサァツグト」
うまく言えないのがもどかしい。ヒザを割られて押し広げられ、あらぬところを見られて恥ずかしい。
「さっきのは惜しかったな」
ツグト君が、ふっと笑った。
「でも、悪いけどそれじゃ止めらんねーから」
そんな宣言と共に、芯を持ち始めてたオレの股間を、ぱくりと彼が咥えて舐め上げた。
その奥に隠れた秘所を、ゆるゆると撫でられる。
そんだけでもう、いっぱいいっぱいで。後は言葉にならなかった。
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