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広場から宿へと戻る途中、アルファ厶と俺の帰りが遅いと心配したシアンが迎えに来た。
ヴァイスに乗って進む俺達の後ろを騎馬でついてくるシアンに、アルファ厶が少し振り返って声をかける。
「シアン。カナがスイ国の奴に連れ去られそうになった。奴はもしかして密偵かもしれん。他国者の我が国への入国を、厳しくした方がいいかもしれない」
「そうですね…。このエン国内で人攫いなど許されることではありません。早速、各地に指令を出しておきます」
「ん、頼んだぞ。それと、カナが腹を空かせている。一足先に戻って、食事の用意を頼んでおいてくれ」
「畏まりました。カナ様、ご無事でなりよりです」
「うん、ありがとう。心配かけてごめんね」
ヴァイスの隣に並んだシアンが、俺の言葉に一瞬驚いた顔をして、その後に優しくフワリと笑う。
そして俺とアルファ厶に一礼をして先に駆けて行った。
俺は、アルファ厶の胸に背中をつけて上を向く。
「シアンって、綺麗だよね。何歳?」
「確か俺の2個下だから25だった筈だ」
アルファ厶が俯いて、俺の鼻先にキスをする。
こんな風に自然とキスをされることが恥ずかしい。でも恥ずかしいよりも嬉しさの方が大きい。
俺は、とても幸せな気持ちで前を向いて、すぐに再び勢いよくアルファ厶を見上げた。
「えっ!今なんて言ったっ?シアンが25歳でアルはその2個上っ?…アルって、若いんだね…」
アルファ厶は身体が大きくて落ち着いているし、しかも王様だから、そこそこ歳がいってると勝手に思っていた。
俺の額に唇をつけて、アルファ厶が不満そうに眉を寄せる。
「なんだ…?俺はそんなに老けて見えるのか?まだまだ若いつもりでいたのだが…。カナは、俺と違って若く見えて良いな…」
「あぅ…ご、ごめんね?アルってしっかりして落ち着いてるし、王様っておじさんがなるイメージだったから…」
「おじさん…」
「あっ…、違うよ?アルはかっこいいお兄さんだよっ?」
見るからにシュンと落ち込んだ様子のアルが、何だかとても可愛い。
俺は、腕を伸ばしてアルファ厶の頬に触れると、馬上で体の向きを変えて、アルファ厶に抱きついた。
「俺、アルの匂いが好きだよ?だって、とてもいい匂いだもん。おっさんだったら臭いじゃん。だから、アルはおっさんじゃないよ」
「そうか。カナは俺の匂いが好きなのか」
つい先ほどの落ち込みようが嘘のように、急に太陽を思わせる笑顔になったアルファ厶が、抱きつく俺の首に唇を寄せて強く吸う。
「いたいっ」
「ふっ、俺の物だという印だ。誰であろうと、俺からカナを奪うことは許さない」
「アルって…暴君…」
首に手を当てながら、ポツリと呟く。
俺は物なんかじゃないと前に言ったのに、まだそんなことを言ってる。
俺は大きな溜息を吐いて、アルファ厶の胸にペタリと頬をつける。
アルファ厶の俺の物呼ばわりに文句があるくせに、本当は少し嬉しいとも思っていたのだ。
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