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それからはアルファ厶が忙しい午前中は、1人で術の練習をして、午後からアルファ厶の手が空けば、剣術を教えてもらうことになった。
アルファ厶が午後にどうしても時間が作れない時は、代わりにリオが教えてくれる。
子供の頃から鍛えてきたリオが剣を使えるのは当然なのだけど、俺と同じ歳のリオには負けたくないという負けず嫌いが発動して、アルファ厶と練習するよりは、剣の上達が早いように思う。
俺は、毎日毎日術と剣の練習に明け暮れて、この城に来て2週間程経った頃には、何とか剣は使えるようになってきた。
アルファ厶は、「カナは覚えが早い。少し変わった動きもあるが、それだけ出来れば上々だ」と機嫌よく笑っていたけど、それもそのはず。
そもそも俺は、元いた世界、日本で子供の頃から剣道を習っていたのだ。
この国の剣は、日本の細い刀とは異なり、アニメに出てくるような平べったい形の剣だから、扱い方も剣道とは全く違う。
アルファ厶やリオと較べると、俺の剣を振るう動きは変だった。だけどそれは、長い間に身体に刻み込まれていた剣道の動きや感覚を、徐々に思い出してきたからだ。
自分で言うのもなんだけど、俺の相手の剣を躱して切り込む動作は、完璧だと思う。
その一方で、術は何の進展もない。
いや、無いことも無いのか…。
掌をかざして意識を集中させると、目の前にある小さな石ころがコロコロと転がるようにはなった。
時間を作ってたまに練習に付き合ってくれるアルファ厶に見せると、「おおっ!」と目を丸くして喜んでくれた。
そのあまりにも大袈裟なリアクションが恥ずかしくて、俺が唇を尖らせて上目遣いで睨むと、なぜか破顔して、俺の尖った口に軽くキスをした。
「アル…見ただろ?ちっさい石ころが少し転がっただけだよ。こんなんじゃ、何の意味もない…」
「そんなことはない。意味はあるぞ。小さな石ころが動いたのだ。カナに術を使える才能があるということだ。才能がない奴は、この石ころどころか葉っぱですら動かせない。カナ、諦めずに練習を続けろ。必ず、強い力を使えるようになる」
「……ほんとに?」
「ああ。俺は嘘はつかない」
いやいや、俺を丸め込むために嘘つくことあったじゃん…。
そう思ったけど、俺を見るアルファ厶の緑色の目がとても澄んで美しかったから、アルファ厶の言葉を信じて大きく頷いた。
俺は毎日この石畳が敷かれた中庭にいたから、ライラとかいうアルファ厶の婚約者には、あの日以来会うこともなかったし忘れていた。
だから、油断していたんだ。
その日、術と剣の練習を終えて城の中へ戻り、途中でリオと別れてアルファ厶の部屋に向かおうとしていた時だった。
ふいに後ろから呼び止められて、何の用事だろうかと振り向いた。
振り向いた数メートル先に、アルファ厶と似た赤い髪の毛を綺麗に巻いて肩に垂らし、アルファ厶の瞳の色と同じドレスを着たライラが、俺を睨みつけて立っていた。
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