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ナジャが持っていた光り輝く石を頼りに進み、街を出て暫く歩く。
暗闇の先に微かに灯りが見えて不思議に思っていると、大きな木の根元に誰かがいるようだった。
ナジャに手を引かれたまま近づくと、そこには太い幹に凭れてレオナルトが座っていた。
目を閉じているから寝てるのだろうかと近づいて顔を覗く。すると、パチリと目を開けたレオナルトと目が合った。
レオナルトは俺を見るや否や、咄嗟に腕を掴んで引き寄せ強く抱きしめた。
「う、うわっ。なんだよ…っ、離せっ!」
「俺は夢を見てるのか?カナデが腕の中にいるではないか。…ナジャ、よくぞ連れて来てくれた」
「ゆっ、夢じゃないから…っ!いいから離せよっ。苦しいっ」
「ああ、悪い…」
俺は息苦しくなって、力を緩めたレオナルトの腕の中から抜けようともがいたけど、まだがっちりと背中に腕を回されていて動けない。
レオナルトの胸を押して身体を離そうとしていると、ふと、上から視線を感じて顔を上げる。
レオナルトが、真剣な顔で俺を見ていた。
「な…なに?」
「カナデ…。この前は悪かったな。手荒なことをしてしまった。あの時の俺がつけた傷は治ったのか?」
レオナルトが、俺の左耳を掌で優しく包む。耳に触れる手の感触がこそばゆくて、俺は小さく震えて首を竦めた。
「治っ…た。アルがすぐに治してくれた」
「ふん…あの時のあいつか。あいつ、また追いかけて来るだろうな。今度は簡単にカナデを渡す訳にはいかない。今すぐにここを立つぞ」
そう言うなり、レオナルトが俺を抱えたまま立ち上がり、そのまま歩き出そうとする。
「ちょっ…、じ、自分で歩くから降ろしてっ。…それに、アルは追いかけてなんか来ないよ…」
「なぜだ?あいつもカナデを大切にしてるように見えたのだが?」
レオナルトよりも少し上にある俺の顔を、琥珀色の瞳が捉える。
俺は、ライラのことや風呂場でのアルファムの態度を思い出して、ズキン!と胸が痛み、歪めた顔をレオナルトの肩に伏せた。
「…違う。俺がこの世界では珍しい黒い髪だから、珍しがってただけだよ。大切になんか…思ってない…」
「カナデ?」
小さく震えた声を出す俺の髪の毛を、レオナルトが何度も撫でる。
「ふむ、わかったぞ。あいつ…、カナデを悲しませるようなことをしたのだな。俺から奪っておきながら、絶対に許せん!カナデ、そんな野蛮なヤツのことは忘れろ。これからは、俺が大切に守ってやる」
ーーはあ?自分のことを棚に上げてよく言うよ…。王様って皆んな我儘…。て、あれ?レオナルトって水の国の…貴族?それとも、偉そうにしてるけど、もしかして一般人?
俺は顔を上げるとレオナルトを凝視する。
いきなり俺に見つめられたレオナルトが、目を泳がせた後にスっと視線を逸らせた。
「なんだ…カナデ。あんまり見るな…」
「え?うそ…、照れてるの?マジで?へぇ…すっごく珍しいものを見た…。じゃなくて!レオナルトって、スイ国の中では、何?」
「ん?何、とは?」
「貴族…とか、パンピーとか」
「パンピ?なんだそれは。そういえばカナデには言ってなかったか。俺は、スイ国の王だ」
「王様…」
ーーやっぱり!!!
そう叫びそうになる口を固く結んで、『この世界の人が話を聞かないんじゃなくて、王様が話を聞かないんだな…』と、一人納得して頷いた。
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