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一晩中馬で進み続け、空が白み始めた頃にそこそこ大きな街に着いた。
まだ街中を歩く人影は疎らだけど、歩いてる人々は、ラルクの大きな姿を見ると、驚いて立ち止まる。そして次にその背に乗るレオナルトを見て、感嘆の溜息を吐きながら去って行く。どうやらフードを深く被っている俺のことは、全く目に入ってないらしい。
レオナルトは、鮮やかな青色の髪に甘い琥珀色の瞳、高い鼻のとても整った顔をしている。そして当然の如く、身体もデカい。
最初の嫌な出会いがなければ、俺だってうっとりと見蕩れてしまう程の美男子だ。
エン国は、他国との交流も盛んらしく、赤系の髪だけでなく、青や金、緑や黄色など様々な髪色をした人々を見かける。
だから、鮮やかな青色のレオナルトの髪も、さほど珍しくはないようだ。
ただ黒髪を持つ人は、やはり誰一人としていない。だから俺は目立ってしまう。
ということで、レオナルトに「絶対にフードを取るな」ときつく言われて、とても暑くて息苦しいけど、フードを目が隠れるほど深く被っていた。
「ここで少し休憩をしよう」
ある建物の前で止まり、レオナルトがラルクから降りて、俺に手を差し伸べながら言う。
レオナルトに腰を支えられながらラルクから降りて、可愛らしい外観の建物を見た。
「なんか可愛い所だな…」
俺は、薄いピンク色に塗られた壁を見て、ポツリと呟く。
「ここの料理が中々に美味いのだ。主人はできた人物だしな。カナデ、急かして悪いが、食事を済ませたらすぐに出るぞ。モタモタしていると追いつかれてしまう」
俺の背中に手を添えて歩きながら、レオナルトが苦笑いを浮かべる。
俺は、レオナルトの言葉にズキンと胸を痛めて、固く手を握りしめた。
「だから…アルは来ないって…。今頃、俺がいなくなってホッとしてるよ…」
「そうだとしても油断は禁物だ。ここを出たら夜まで休憩なしだぞ。しっかりと食べておけ」
「うん…」
小さく頷いて、レオナルトに促されるまま、店の奥へと進む。
一番奥にある部屋の前で、先に建物の中に入っていたナジャが、頭を下げて待っていた。
カクンッと頭を揺らす俺に笑って、レオナルトが後ろから覗き込む。
「カナデ、眠いなら寝ていいぞ。俺が落ちないようにしっかりと抱いててやる」
「うん…、だ、いじょぶ…。ふわぁ…」
「もう半分寝てるではないか」
俺に顔を寄せるレオナルトの吐く息が、俺の頬に触れてこそばゆい。
レオナルトは、揺れる馬上で器用に俺の身体を反転させると、胸にしっかりと抱き抱えた。
「ほら、これで落ちることは無い。安心して眠れ」
「…寝れないよ」
ーーなにこれ。俺、男なんだけど。
レオナルトに大事に抱きしめられている俺を見て、街道を歩く人々から、遠慮がちな黄色い悲鳴が聞こえてくる。
俺はすごく恥ずかしくなって、一気に眠気も吹き飛んでしまい、レオナルトを下から睨みつけた。
あのピンクの建物の奥まった部屋で、とても美味しい食事を頂いた。
まだあまり食欲が無かったけれど、パンと野菜のスープ、香ばしい香りの肉料理を少しだけ食べた。
そしてなんと!デザートにプリンを食べた。まさかこの世界でプリンを食べれるとは思ってもいなかったから、俺のテンションは一気に上がった。
鶏に似た鳥がいて、その卵から作ってるらしい。まさしくプリンだ。
ずいぶんと久しぶりの大好きな味に、俺はかなりニコニコとしていたようだ。
とても微笑ましく笑うレオナルトとナジャから、「これも食べろ」と2人のプリンをもらってペロリと平らげた。
プリンのおかげでお腹がいっぱいになった俺は、ラルクに乗ってすぐに眠気に襲われ、カクンッと頭を揺らしていたのだ。
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