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「うわぁっ!なっ、なにっ?」
くるくると身体が回転しながら強い風に押し上げられて、大木から数メートル離れた場所まで飛ばされた。
かなりの高さまで飛ばされ、ヤバい!と俺の全身に緊張が走る。
しかし急に風が無くなり、俺の身体が下降を始めた。落ちていく先を見ると、キラキラとした金髪と澄んだ空のような青い瞳のバルテル王子が、両手を広げて立っていた。
「え?なんでっ!?」
大きな声を上げながら、俺はバルテル王子の腕の中に落ちた。
バルテル王子は、かなりの高さから落ちてきた俺を、少しもよろけることなくしっかりと受け止めた。
俺は大きく安堵の息を吐いて、バルテル王子を見た。
「あ…ありがとう…ございます」
「よい。俺がわざとおまえを飛ばしたのだ」
「…え?」
バルテル王子の腕の中に収まったまま、俺はバルテル王子が言った言葉の意味を考える。
「え…と、今、なんて?」
「だから、俺が風を起こしておまえの身体を巻き上げて運んだと言っている」
「な、なんで?」
風になびく金髪が、陽の光に当たってキラキラと煌めいている。
俺は悪い予感に背中を震わせて、バルテル王子の腕から逃れようと身体を捻った。
「こら、暴れるな。なるほど…、本当に美しい黒髪をしている。俺は、おまえを一目見て欲しくなったのだ。だからあそこにいるスイ国王の後をつけて、おまえを手に入れる機会を狙っていた」
バルテル王子が指さした先にいるレオナルトを見て、俺は息を飲んで叫んだ。
「…え?レオンっ!ナジャっ!どうしたのっ?」
大きな木の下で、2人が胸を押さえてうずくまり、身体を震わせていたのだ。
「ちょ…っ!あんたっ、離せよっ!あの2人に何をしたんだっ!」
「おまえ、小さいのに威勢がいいな。おまえを風で巻き上げると同時に、あの2人に無臭の毒を嗅がせた」
「な…、ど、く…?」
「そんなに怖い顔をするな。少しの間、息が苦しくなって身体が痺れるだけだ。スイ国の王は、中々に強いからな。出来ることならやり合いたくはない。さて、今のうちにおまえを連れて行くとしよう。おまえ名前は?」
「俺を離せ。俺は、あんたと一緒には行かない」
「ふ~ん。怒った顔もいいな。まあいい。名前は国に帰ってから吐かせるとしよう」
バルテル王子が、俺を抱いたままくるりと向きを変えて歩き出した。
俺は腕や足を無茶苦茶に振り回すけど、バルテル王子は全く動じない。
くそ!仕方ない!と大きく息を吸うと、俺は思いっきりバルテル王子に頭突きを食らわせた。
ゴチン!と大きな音がして、目の前がチカチカと明滅する。
バルテル王子が片方の手で額を押さえたため腕の力が緩んだ。
その隙に、俺は王子の腕から逃れて素早く地面に飛び下り、レオナルトとナジャに向かって走り出す。
「あ、危ない!カナデっっ!!」
こちらを見ていたレオナルトが、大きく目を見開き、悲痛な声を上げた。
「え?」
俺の両脇を風が吹き抜けた瞬間、両腕と両足に鋭い痛みが走った。
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